《1000》 緩和医療あっての抗がん剤治療 [未分類]

先日、末期がんの患者さんのご家族に緩和医療の話をしたら
あとで、烈火のごとく怒られました。

「最期までがんと闘いたいのに、緩和医療とは何事だ!」
「医者のくせにがんを治すことを諦めて緩和とはけしからん!!」

市民の緩和医療という言葉への印象を垣間見た一瞬でした。
本当はがんと診断した時から緩和医療が始まるのですが。
あるいはがんに限らずすべての病気の終末期に必要な概念。

緩和医療やホスピスをそのように誤解している市民が多い。
実は、これは市民に限らず、医者や看護師にも多いのです。
今日は、緩和医療の最近の動向について簡単にお話します。

緩和医療とは、痛みを和らげる医療です。
痛みとは、肉体的、精神的、社会的、霊的痛みのこと。
和らげる手段は、お薬以外に、種々の非薬物療法があります。

傾聴やカウンセリングが有名です。
アロマテラピーや音楽療法やタッチケアなども有効です。
さらに宗教者による支援も有効です。

緩和医療の概念は、年々、変化しています。
まず、時期の問題です。
昔は、がんの治療を諦めたあとが緩和医療、でした。

現在は、がんと診断された時点から緩和医療が始まります。
そして抗がん剤治療中も緩和医療で支えることが大切です。
がんの治療と緩和医療は、常にセットなのです。

一方、最近、がん以外にも緩和医療が適応されます。
腰部脊椎管狭窄症で腰痛がひどければ、痛み止めを使います。
脳卒中後遺症、認知症、心不全や肺気腫にも緩和医療が必要。

これらは、非がんの緩和医療という概念です。
緩和医療はがんだけではなく、非がんの病気にも拡大されています。
生けとし生きるものすべての方の苦痛に適応される概念、なのです。

実際、モルヒネなどの麻薬はがん以外の方にも使えます。
多少の制限はありますが、慢性疼痛全般に使えます。
慢性疼痛とは、3ケ月以上持続する痛みのことです。

たとえば線維筋痛症という病気があります。
全身が痛くて痛くてたまらない病気に、麻薬も使います。
痛みという視点では、がんもがん以外も同等と考えるのです。

以上のように、緩和医療の時期と対象疾患は変わっています。
しかし理屈はそうでも市民や医療者に充分周知できていません。
冒頭の家族のような、「お怒り」に忍んでいる毎日です。

PS)
どうやら今日で1000回目の連載になるようです。
あっという間の1000日でした。
その中に、3.11がありました。

1000回というと、比叡山延暦寺の1000日回峰行を
連想してしまいます。
あの厳しい修行に比べたらこの労力などh1000分の1以下。

1000回は単なる通過点に過ぎません。
みなさまに何が伝えられるのか?
この1点のみが、私のモチベーションです。

これからも毎日、書いていきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

講演で全国を回っていますので
いつかどこかでお会いしましょう。