某文芸誌に近藤誠先生が「中村勘三郎さん がん治療への疑問」
と題して、自説を述べられています。
「抗がん剤+手術」だけが選択肢ではなかったはず、との見出しです。
- 食道全摘術は妥当だったのか
- 抗がん剤治療を行ったから肺炎が起きた
- 放射線治療のほうがベターであったのでは
この3点に、近藤先生の主張は要約できます。
本当かな? と皆さん、思われるでしょう。
あれだけ本が売れている近藤先生が書かれる文章は
社会的影響力が大きい。
細かに議論したい点が沢山ある文章ですが、論点を絞ります。
以下、私の見解を要約してみます。
- 抗がん剤治療も手術も特に問題は無かった。
- 術後の経過は医療の不確実性の範疇である。
- 肺が弱っていたことが、もっとも災いした。
抗がん剤で肺炎が起きたという近藤先生の見解には賛同できません。
イレッサ → 間質性肺炎の例は、勘三郎さんには関係ないと思います。
たしかに肺にもいいものではないでしょうが、直接の原因ではない。
手術療法と放射線治療の成績はあまり変わらないという指摘は
おそらく当たっているのではないかと思います。
私はリンパ節転移が判明していたという点が最も気になります。
勘三郎さんの手術自体ひとつの「賭け」であったと思われます。
術前に担当医から、治る確率は12%であると
本人にはっきり説明されていた、と書かれています。
切除組織の顕微鏡的検索から、完全切除が告げられました。
つまり顕微鏡レベルでは、外科医は賭けに打ち勝ちました。
もちろんその後の臨床経過を見ないと真に勝ったかは不明ですが。
つまり、抗がん剤治療も手術も特に問題は無かったと思います。
術後、胆汁を含む胃液を大量に嘔吐して、「肺がやけどをした」
ことが結果的には致命傷になったが、不可抗力だったのではないか。
医療の不確実性、という言葉があります。
医療は生身の人間を相手にしますから100%確実はありません。
安全性の高い手術でも上手くいかないことがあればその逆もある。
医療行為の是非は極論すれば、すべてやってみなきゃ分からない。
食道全摘術後にARDS(急性呼吸窮迫症候群)が起きる可能性は、1%と言われています。
たまたまその1%が勘三郎さんに起こってしまったのではないか。
PS)
昨日は、某ラジオ局の人気番組の収録でした。
1月17日ということで、阪神大震災の話にもなりました。
平穏死の話が中心ですが、2月9日の放送予定だそうです。
その後、東京の本郷で会議に参加。
東京へ向かう飛行機は、ダイヤがかなり乱れていました。
羽田への着陸もやり直しで、遅れました。
夜は、千葉の幕張で講演していました。
東洋医学について真面目に1時間半、話をしました。
始発の新幹線は米原付近で雪のため徐行運転中です。