《1016》 立花隆さんのがんへの思索 [未分類]

昨年は超忙しくて、本屋さんに行く時間がありませんでした。
アウトプットばかりでインプットのない情けない1年でした。
昨日は2つの会議のあと久々に大きな本屋さんに寄りました。

自分の著書がちゃんと並んでいて、なんとなく一安心(笑)。
そして店内をフラフラしていたら面白い本を見つけました。
立花隆さん著の「がん 生と死の謎に挑む」(文藝春秋刊)。

この本には、DVDがついています。
さっそく、そのDVDをじっくり見ました。
やっぱり、読むより見るほうが理解が早いですね。

そのDVDで私が一番驚いたのは「マクロファージの裏切り」
というシーンです。
マクロファージとは、がん細胞を食べてくれる味方のはずです。

しかしその味方がご主人を裏切ってがん細胞を通してしまいます。
このシーンは圧巻でした。
やはりがん細胞は、正常細胞さえも味方にしてしまうのです。

昨日、免疫療法をUFOに喩えたことを思い出しました。
自分のリンパ球をがん細胞を攻撃するように一生懸命教育しても、
いざ体内に入れたらがん細胞の誘惑に負けてしまうかもしれない。

そんな私の想像が見事に描かれているようで驚きました。
免疫療法が理屈通りに効かない理由のヒントがいくつも
描かれている優れた書籍です。

近藤誠先生の功績についても冷静な語り口で触れられています。
松田優作さんのがんとの付き合いについても明かされています。
そしてご自分も膀胱がんと闘った一部始終についても記された。

本屋にはがんに関してさまざまな書籍が並んでいます。
しかし、正直、どの本もどこか偏っていると感じます。
なにか思惑を感じる本が多くしっくりする本が少ない。

そんな中、立花隆さんの本は、飽くなき知的好奇心と
ご自身の体験に基づく様々な「思索」が記されています。
人類が本当のところがんをどこまで理解しているのか?

立花さんの原点はそこにあります。
実は私もそこが一番知りたいのです。
本当にどこまで分かっているのか?

がんとは何なのか?
結局、そこに帰ってきます。
そうした基本的命題についても分かり易く解説されています。

抗がん剤で悩んでいる方に、是非読んでいただきたい1冊です。

PS)
一昨日、偉いお医者さんばかりに「平穏死」について講演しました。
しかし、私の著書を読んだ、というお医者さんは皆無でした。
ショックだったのは中村先生の「大往生」の本も誰も知らなかったこと。

その講演の前には、市民講演会で2時間お話をしました。
立ち見が出る位、沢山の方に来て頂き感激しました。
そして彼らは、私の本も中村先生の本も読まれていました。

抄読会を開き、一言一句詳しく読みこんでおらる人も。
その差を、いったいどう考えればいいのか?
今年もやることが沢山あるな、と感じました。