《1021》 抗がん剤をやめて8カ月、末期がん患者は花見満喫 [未分類]

夏に抗がん剤を中止した時には、Aさんが年末まで
生きている確率は、正直、5%もないと思っていました。
しかし、一緒に忘年会で酒を飲んで笑うことができました。

その時点では、桜の花見などは、確率0%だと思っていました。
無理やろなあと思いながら花見のチラシを壁に貼ってきました。
しかしとうとう花見のシーズンまでAさんは生きていたのです。

クリニック主催のお花見に、Aさんは自分で歩いて参加されました。
私の下手な歌が終わったあとに、Aさんは立ち上がりました。
そして、なんと手に持ったクラリネットで演奏し始めたのです。

両肺の4分の3に水が貯まっていることが信じられないくらい、
滑らかな演奏を繰りひろげたのです。
そもそもそのお花見は、在宅患者さんだけを対象としています。

比較的状態が悪い人ばかりを車で搬送してのお花見なのですが、
その中でも一番早く逝きそうに予想されたのがAさんでした。
しかしどう見てもそんな人とは私にも、見えませんでした。

もちろん参加者も、Aさんがそんな状態とはだれも気がつきません。
「元気なひとがおるなー」という顔でながめています。
クラリネットの音色を、うっとりと聞いていられます。

肺活量がほとんど無いのに、どうして吹けるのか不思議でした。
演奏後のAさんは、汗びっしょりでした。
「もう、これで思い残すことはない」と呟かれました。

末期がんの患者さんとの花見は恒例行事として毎年続けています。
2年前は福島県から避難中の被災者たちにも加わって頂きました。
そもそもAさんはいつまで生きるのか、と思うようになりました。

抗がん剤を止めてから、もう8カ月以上経っていました。

(続く)

【PS】
昨夜は、深夜の往診や、急変、看取りが続き
眠る間も無く朝を迎えました。
さすがに、眠いです。

昨夜、朝日新聞社の記者さんに「いつ書いているの?」
と聞かれましたが、「空いた時間で書いています」としか
答えられませんでした。毎日15分程度を費やします。

今日は、これから大阪の岸和田市に講演に出かけます。
尼崎のだんじり祭りも有名ですが岸和田が本家本元です。
市長さんも聞きに来られるということで緊張しています。