《1029》 抗がん剤を止めて夫婦で欧州1カ月 [未分類]

Eさん(58歳、男性)は、背中の痛みを訴えて当院を受診。
エコーを当てると、10秒で膵臓がんと分かる状態でした。
専門病院に紹介しましたが、手術不能と診断されました。

ジェムザールなどによる抗がん剤治療が始まりました。
しかし、膵臓がんの進行は止まりませんでした。
2カ月後、Eさんは抗がん剤治療を止める決断をしました。

死ぬ前に、一度も行った事が無いヨーロッパに
行きたいと相談をしてきました。
かなり痩せていたので体力が心配でしたが、賛成しました。

結局、奥さんと2人で1カ月間、ヨーロッパを一周されました。
頻回に電話を入れてもらい、安否確認をしながらの旅行でした。
まさに、夫婦の「最期の旅」でした。

お墓を希望せず、散骨場所をある湖に自分で決められました。
旅行中、ほとんど食べられなかったそうです。
そして1カ月後、無事、帰国されました。

私もホッとしました。
Eさんは、帰国後、遠く離れた田舎町に移住されました。
秋祭りでは、若者と一緒に、お神輿をかつぎました。

その直後、ホスピスに入院されました。
お見舞いに行きましたが、満足一杯でした。
愛犬と一緒に暮らせるホスピスだったからです。

Eさんは、結局そのホスピスで旅立たれました。

四十九日の法要が済み、奥さんが思い出のヨーロッパに
出かけて散骨し、Eさんの希望を叶えてこられました。
私とのご縁は、最期の前半部分でしたが手紙を頂きました。

Eさんは抗がん剤を止めたあと、3回、移動されました。
ヨーロッパ、日本の田舎、そして愛犬とのホスピス・・・
いろんな最期の過ごし方があることを教えて頂きました。

【PS】
昨日は、朝日新聞の本紙に私の記事が掲載されました。
多くの方から「見たよ!」との連絡をいただきました。
NHKの人気ラジオ番組に出演したことも重なりました。

「平穏死・10の条件」と「胃ろうという選択、しない選択」の
ネット書店での順位も急上昇し、反響の大きさに驚きました。
2冊の平穏死本を多くかたに支持して頂き喜んでいます。

昨日は、京都、大阪、南大阪の3カ所で講演しました。
今日は災害対策について、難病患者さんに講演します。
その間をぬって、往診、看取りと走り回っています。