《1030》 入院なしでフルコースのがん治療 [未分類]

Fさん(46歳、女性)は、胃がんの再発に対して
通院でフルコースのがん治療を受けておられました。
抗がん剤、免疫療法、温熱療法だけにとどまりません。

肝臓への転移に対しては、塞栓療法も行いました。
4カ所の医療機関をかけもちで通院治療されていました。
それをやるのも、またできるのも、理由がありました。

がん保険のリビングニーズを使いました。
「余命半年」という診断書を医者が書けば、
多額の死亡保険を前倒しでもらえるのです。

1枚の診断書を書くだけで、何千万円もの保険金が
本人が生きている間にもらえることを教えました。
お金は、その人が生きている間に使っていいのです。

抗がん剤治療と免疫療法などの治療は、
同一医療機関では行えません。
混合診療になるので、別々の医療機関で行うことになります。

Fさんには、リビングニーズで頂いたお金で、
さまざまな保険医療と先進医療と代替医療を受けられました。
その点は、満足しておられ、後悔は無いと思います。

Fさんが、そこまで頑張ろうと思ったのは、子供のためです。
まだ小さな子供さんが、3人もおられるのです。
子供との時間を大切にするには、入院ができません。

倒れるように帰宅するので、在宅医療も依頼されました。
ステロイド入りの点滴をして、少しでも元気を回復させます。
そしてまた次の日の治療に出かけるという生活が続きました。

点滴での抗がん剤治療は、半年ほど経った時点で断念しました。
無効になってきたのと、副作用が大きかったためです。
こうした全身療法は断念しましたが、局所療法は続けました。

局所療法とは、文字通り、そこだけに抗がん剤を入れる治療法。
肝臓に入る動脈から転移巣にほぼ直接、抗がん剤をぶつけます。
もちろん多少全身を巡りますが、副作用は比較的、軽微です。

しかし抗がん剤の局所治療も、温熱療法も免疫療法も、
関わって9カ月後には、継続できなくなりました。
免疫療法の最終回は、点滴が自宅に郵送されて点滴しましたが。

それでもFさんの口からは、入院という言葉は出ませんでした。
3人の子供と一緒に暮らしたかったのと、入院しても、
もはや何も無いことを、Fさん自身が誰よりよく知っていました。

もちろん、ご家族の理解と協力もありました。
私たちは、緩和医療を2カ月間、しっかり行いました。
結局、関わってから11カ月後にFさんは自宅で旅立たれました。

何故、こんな病気になったのか?
私自身も本当に気の毒でした。
残された子供たちを思うとFさんの無念さに涙が出ます。

しかしFさんは思い通り、納得のいく、がん治療を受けました。
その1点だけは、Fさんは間違いなく納得されていました。
副作用はありましたが、抗がん剤で少し延命できたようでした。

【PS】
昨日は、難病の患者会さんに呼ばれて、防災の講演をしていました。
神経難病、膠原病、脳脊髄液減少症、人工透析患者さんたちが、
いざ大地震が起きた時に、どうすればいいのかをみんなで考えました。

私は、阪神大震災の経験と、東日本大震災の被災地支援の経験を
スライドを見て頂き、あれこれとお話ししました。
「防災とは逃げることである」と。

そして、「防災とは、イメージすること、備えること」であり
「防災とは最高の予防医療であり、地域包括ケアである」とも。
結局、ご近所さんとの普段のお付き合いで運命が変わるのです。