《1032》 本人は止めたいが家族が大反対 [未分類]

Iさん(63歳、女性)は3年前に大腸がんが見つかりました。
外科手術のあと入院し、抗がん剤治療を2年間半、続けてきました。
主治医は手術後に家族に、「余命は3カ月」と言われたそうです。

本人は、病院も抗がん剤治療も大嫌いなのですが、
家族に後押しされる形で、これまでなんとか
抗がん剤治療を受けてきました。
3カ月と言われて3年生きているのだから、効果があったのでしょう。

しかし3年目にさしかかる時の抗がん剤治療は辛かったようです。
点滴をして1週間目に目がクルクル回り、緊急入院されました。
原因は、抗がん剤の副作用だったのです。

体重も減り、腹水が貯まり、黄疸が出たIさんは決断しました。
「年内で抗がん剤治療は一切止める!」と。
一度決めたら有言実行で、予約の日も病院に行きませんでした。

ご家族は全員、抗がん剤中止に大反対しました。
「お袋、何を考えてるんや!」と、若き外科医である長男は、
涙ながらに抗がん剤続行を懇願しました。

しかしIさんは、頑として決断を曲げませんでした。
Iさんは、もはやほぼ寝たきりの状態でした。
在宅依頼があったので往診してこれまでの経緯を聞きました。

せきを切ったように、これまでの想いを吐露するIさん。
家族や長男さんは、現在の脱水を心配されていました。
しかし終末期の脱水は決して悪いことではないことを説明。

しかし町医者の言うことなど、なかなか信じてもらえません。
まして、抗がん剤を止めたIさんの味方をする町医者など
家族はみな、疎ましい目で見ています。

「少なくともIさんの意思は尊重してあげてください。
 3年の抗がん剤経験を踏まえて自分で決められたのですから」
私は初対面の家族に向かって、Iさんの決断を擁護しました。

「大丈夫!桜の花を一緒に見ようね!」
「まだまだ大丈夫や、任しておいて!」

Iさんの目から、大きな涙が溢れてきました。

【PS】
連日、抗がん剤と胃ろうの相談が寄せられます。
「胃ろうという選択、しない選択」に書いた通りの問答が
毎日、全国各地で繰り返されていることを肌で感じています。

内外の諸情勢を見ていると、抗がん剤と胃ろうに終始している
日本国は大丈夫かいな?という気がしてきます。
先日の麻生発言も、決して悪くなかったのに・・・

今日は、「労働衛生とメンタルヘルスケア」の講演もしています。
頼まれれば何でも引き受けてしまう、節操の無いオッサンです。
そうこう言いながら、2月もはや中旬。

インフルもそろそろ峠越えでしょうか。