《1036》 温熱療法もQOLが上がるなら [未分類]

Nさん(58歳、女性)は、1年前に手術した大腸がんが
全身に転移し、抗がん剤の標準治療を受けていました。
しかしある日、突然、抗がん剤を止めてしまいました。

手足のシビレが、相当辛かったようです。
漢方薬の牛車腎気丸や西洋薬のリリカなどを
使いましたが、Nさんのシビレは強烈だったのです。

抗がん剤治療に見切りをつけたNさんは、ネットで
調べた温熱療法の施設にタクシーで通い始めました。
最初の何回かは、保険が適応されると喜んでいました。

ご家族も温熱療法への変更に賛成し、応援していました。
温熱療法から帰ったNさんの機嫌がいいからかもしれません。
毎回、実にいい顔をして帰ってこられます。

一般に温熱療法は、抗がん剤治療と併用して
効果があると言われています。
しかしNさんは温熱療法単独で3カ月ほど過ごされました。

途中から、1回1万円少々かかるのが辛いと言っていました。
温熱療法は、がん細胞が熱に弱いことに着目した治療法です。
がんが体表に近いほど効果があるそうです。

体を温めると、それ以外にもいいことがたくさんあります。
免疫機能が上がり、がん細胞を攻撃してくれます。
気分が良くなれば、食欲も出ます。

どこかサウナや岩盤浴と似ています。
患部だけをサウナに入れるような感じでしょうか。
副作用が無いのが温熱療法の最大のウリです。

Nさんの腫瘍マーカーは毎月、上昇していきました。
温熱療法ががんに効いたとは言えません。
それでも3カ月間、Nさんは満足そうに通われました。

延命効果があったかどうかは分かりませんが、
QOL(生活の質)は上がっていた、と思いました。
費用も免疫療法ほど高くはない点は私も安心でした。

抗がん剤治療を中止して、代替医療に変える
患者さんが時々おられます。
それも生き方のひとつとして、自己決定を尊重します。

代替医療と抗がん剤と併用も良し、単独も良し。
私たちは、常に見守る立場です。
患者さん自身が納得、満足することが一番だと思います。

【PS】
昨日は、神戸で「在宅医療と漢方」の講演をしました。
やる度に、在宅と漢方の相性の良さを確信して、
漢方の本質が見えてきます。

在宅医療とは、総合診療です。
臓器別、縦割りではありません。
漢方も総合診療の思想が根底にあります。

20種類ものお薬を飲まされている在宅患者さんと
1種類の漢方薬を飲んでいる在宅患者さんがいます。
私は後者に持っていくことが理想だと思っています。