《1039》 子どもが平穏死の邪魔をする [未分類]

大腸がん、多発性肝転移、がん性腹膜炎と診断されている
Rさん(71歳、女性)のケースをご紹介します。
Rさんは3年に及ぶ抗がん剤治療を行ってきました。

しかし、ある日を境にピタッと抗がん剤治療を中止されて、
私に在宅医療を依頼してきました。
「もうこれ以上、やったら死んでしまうやん」との弁です。

たしかに黄疸、腹水に加えて高度の痩せが見られ
抗がん剤治療どころか、命の炎が燃え尽きようとしています。
腫瘍マーカーであるCEAの値も、1万近くもあります。

私は、Rさんの選択は正しいと直感しました。
しかし抗がん剤の中止に一番反対したのが、ご家族でした。
夫は「治って欲しいから」と言って抗がん剤の中止に反対。

医師である長男も、中止に強く反対されました。
長女は看護師ですが、自分が働いている病院で
抗がん剤治療をやってきたこともあってか、中止には大反対でした。

Rさんは「娘のために私が死ねと言うの?」と笑っています。

夫や子供さんは、私が夜に訪問するととても嫌そうに見ます。
私が抗がん剤の中止を指南していると思いこんでおられます。
しかし、それは事実とまったく違います。

Rさんは、私と出会う前に自己決定されたのです。
私たちはRさんの意思を尊重するだけの立場です。
ご家族が納得されることを、待つばかりです。

一般的に子供に医療者がいた場合、このようになりがちです。
最期まで抗がん剤にしがみつくことが多くとても難儀します。
子供が医者、看護師、教師、坊さんの場合が要注意なのです。

「子供が親の平穏死を邪魔している!」

これまで何度、そう感じたことでしょう。
親は覚悟して、いいタイミングでギアチェンジしているのに
子供が最期までギアチェンジできない・・・

そうした想いを、3冊目の「平穏死」本に書きました。それが、
『「平穏死」という親孝行 ~親を幸せに看取るために子どもがすべき27のこと~』
という本です。2月25日に出版されます。

「平穏死」 10の条件 胃ろう、抗がん剤、延命治療いつやめますか?
胃ろうという選択、しない選択 平穏死から考える胃ろうと功と罪
と併せて、「平穏死・三部作」となります。
是非、ご一読いただき、ご批判を賜れば幸いです。

【PS】
今日は、医局と高校の後輩の国会議員が、
朝一番の国会で在宅医療や尊厳死についての質問に立ちます。
といっても、午前9時~10時15分の75分間です。

インターネットで、あとからでも見られます。
参議院の予算委員会で検索してください。
終末期議論が少しでも前に進んでくれることを願っています。