《1043》 自分で止めないと止まらない [未分類]

死ぬ日の朝も抗がん剤を打ちに行った在宅患者さんがいました。
どうして?
みんなそう思うでしょう。

私もそう思いました。
しかし誰も止めてくれなかったのです。
そんな馬鹿な、と思われるでしょうが、そんなこともあるのです。

病院のお医者さんはこう言いました。
「患者さんが打ちに来たから、打っただけです」

患者さんや家族はこう言われました。
「先生が止めろと言わないから、行きました」

どう思われますか?

走り出したら、もう止まらない。

私のことではありません。(笑)
現代医療のことです。
ブレーキが壊れた車のようです。

ボクシングでは、レフリーが止めます。
しかし医療には、レフリーはほぼ居ません。
私は請われたら、レフリー役をやっていますが。

「ギアチェンジ」という言葉はあっても
どこでギアチェンジをすればいいのか分からない医師が多い。
私自身も日々、迷いますが、医師や看護師の仲間と相談します。

そしてなにより、患者さんやご家族とよく話をして
希望を叶える形を模索します。
まあ、当たり前のことですが。

医療は患者さんのためにあります。
我々はほとんどの場合、受け身です。
患者さんから言ってもらって全然、いい、のです。

言わないと車は止まりません。
抗がん剤も「止めどき」を一番知っているのは
患者さん自身であることを、是非知っておいてください。

PS)
とは言うものの、本人の意思決定を邪魔するのは
実は家族です。
特に長男ないし長女が邪魔をします。

医療現場は「家族対策」に相当なエネルギーが使われています。
EBM(Evidence based medicine)という言葉がありますが、
Family based medicineと冗談で言われるくらいです。

いや、冗談ではありません。
家族が親の平穏死のもっとも大きな阻害要因なのです。
実は、そんな内容の本が本日、発売されます。

「平穏死という親孝行」
平穏死本の第三弾です。
3冊合わせて、「平穏死・三部作」と名付けました。

是非、子供さん世代に読ませてあげてください。
エンデイングノートだけでは、不充分なのです。
尊厳ある最期を迎えるためには、息子さん対策も必要なのです。