毎日、毎日、抗がん剤に関する相談があります。
メール、手紙、FAX、そしていきなり来院。
最後の来院からは、さすがに逃げられません。
みなさん、抱え切らないほどの資料を持参されます。
血液検査、手術所見、診断書、エコー写真、CT画像・・・
2~3年間の闘いの歴史を聞くだけで、20~30分かかります。
「ことろで、どうしてここに来られたのですが?」
「それが抗がん剤を止めてもいいか、教えていただくて」
「じゃあ、止めればいいじゃないですか?」
「しかし主治医からは、絶対に止めたらダメだと言われています」
「そんな・・・」
「止めたら死ぬ!と、念を押されています」
「どうせ死ぬんだからいいじゃないですか」
「先生、ひとごとだと思って・・・」
「いや、先に死ぬのはたぶん私の方ですよ、不摂生がたたって(笑)」
「とにかく私はまだ死にたくないのですよ。 でも・・・」
「でも?」
「でも、しんどいので、やっぱり止めたいのですが」
「じゃあ、止めればいいじゃないですか」
「・・・・・」
まるで禅問答のように、堂々巡り。
どうやら、ご家族が抗がん剤中止に反対されているそうです。
しかししんどいので家族を説得するエネルギーはもう残っていないとも。
そんな患者さんにとっては、長尾の「止めた方がいいのでは?」という
きわめて単純な結論が、心に響くそうです。
それまで誰もそのフレーズを言ってくれなかった、とも。
「先生の言葉で、スーッと楽になりました。
これで長生きできます」(笑)
「止める」という選択肢があることさえ、知らない患者たち。
自分で決められないという人が多い現実に驚く日々です。