《1052》 介護施設での看取りは発展途上 [未分類]

「日本人の死に場所」をテーマに話をしてくれないか――
そんなオファーが、昨年から増えてきました。
看取りの場所は、病院と在宅とは限りません。

老健、特養のみならず、有料法人ホーム、グループホーム、
サービス付き高齢者向き住宅での看取りが推進されています。
といっても、そもそも介護施設には医療者は常駐していません。

私が主治医を依頼されているある施設での看取りは大変です。
いや看取りどころか、日々、さまざまな連絡が入るのです。
介護士が体温、血圧、脈拍、酸素飽和度などを測定します。

夜中も3時間おきに
時には1時間おきに
入所者さんのバイタルサインを測定しては、報告してきます。

夜中の3時に報告されてもこちらも困ります。
別に死にかけでもなんでもないのに、
37度の微熱が出ただけでも、大騒ぎ。

インフルではないか?
ノロではなか?
原因は何だ???

施設が、ミニ病院化している??
介護士たちは、毎日、パニックになっています。
医療が無い施設とは、こんな感じになりがちです。

「お願いですから、寝ている時に血圧を測らないでください」
といくら言っても無駄です。
深夜でも2~3時間毎にバイタルをチェックすることが仕事。

一度、強くお願いしたことがあります。
「お願いだから血圧を測らないでください!」と。
すると今度は、介護職員がパニックになりました。

黙って見ていることに、彼らが耐えられないのです。
バイタルサインを測定すると、安心するのだそうです。
職員自身が安心するためのバイタルチェックなのです。

これが多くの介護の現場の現実、です。
普段がこれですから、「看取り」なんて、ウルトラCです。
多くの施設が、「看取りなんてとんでもない」と。

国の方針と、現場は真逆を向いています。
医療の一番悪いところを真似しています。
介護施設での看取り研修は本当に難しい。

実は先週、施設での看取りについて講演しました。
今週は、全国レベルの介護施設の集まりで、2回、
まさに「施設での看取り」というテーマで講演します。

今日は、昼休みの講演となります。
診療の合間を縫って神戸と往復しますが、7日も同様です。
施設での看取りを教えることも大きな使命だと思っています。

このテーマを伝えるには、1日は欲しいところです。
それくらい伝えるべきことが、山積しているのです。
それを1時間か1時間半に凝縮して、伝えてきます。