昨日は全国の特別養護老人ホーム(特養)の団体の主催で、
相談員さんを対象に、「平穏死」についてお話をしました。
恥ずかしながら相談員制度があることを知りませんでした。
私自身、特養の嘱託医の経験はありません。
時々、往診を依頼される程度です。
特養はまさに未知の世界。
認知症の方が暮らすグループホーム(GH)は知っています。
最近、「GHがミニ特養化している」などとよく聞くので、
GHの大型のものが特養なのかな、なんて想像しています。
特養の嘱託医をやっている知人が何人かいます。
みんさん、いつも文句ばっかり言っています。
「給料が安くて、無用に忙しいばかり」だと。
聞くと、確かに薄給です。
それで24時間、看取りまでするのは大変だな、と思います。
しかし、国は、施設での看取りを推進しています。
現在、全国の特養の4割が看取りをしていると聞きました。
そんなに多いのかと、ちょっと驚きました。
まだ1~2割程度かと思っていたからです。
嘱託医の携帯電話はよく鳴ります。
大半は、発熱コールです。
GHからの電話も、大半は発熱です。
医療者は、発熱の意味を知っていますので慌てませんが、
介護者は、発熱でパニックになる人もいます。
一晩中、1時間おきに体温を測る介護士さんもいます。
特養がミニ病院化しているように感じます。
病院の特性のひとつは「待てない」ことです。
何か変化が起きれば、対応しないといけない風潮がある。
大阪大学の鷲田清一先生が「待つこと」の大切さを説いています。
私自身も、その意味がようやくよく分かる年齢になりました。
特養の若き相談員にも、「待つこと」の大切さを話してきました。
昨日、ある施設で吐き気だけでパニックになり、
救急車を呼ばれた方がおられました。
往診すると救急隊も来られていましたが、帰って頂きました。
患者さん自身も、そして施設職員も待つことができなかった。
待つということは、言うは易しですが、行うは難しです。
イザという時に待つことができるには普段の訓練が大切です。
施設での看取り教育の前に施設職員への「待つこと教育」のほうが
優先すると、最近、強く感じています。
「待てる職員」が多くいる特養が、看取りができる特養ではないか。