《0106》 医者も覚えきれない合剤ブーム [未分類]

今、高血圧症のお薬の市場が、大きく変わろうとしています。
それは、「合剤」という、2種類の薬を組み合わせた剤型が、
ようやく日本においても解禁されたことです。

前回も書きましたが、高血圧症には大きく分けて4系統のお薬があります。
①利尿剤
②カルシウム拮抗剤
③β遮断薬
④ARBないしACE。

基本的には、あくまで食事療法(塩分制限)と運動療法が優先します。
それでも高い場合に、以下のようなお薬を使います。
もちろん1種類が基本で、一つでコントロールできない場合に2系統を使います。

さて、①と④の合剤が、既に4種類、発売されています。
細かい話ですが、同じお薬の組み合わせでも、利尿剤の量ないし
ARBの量に大小があるので、正確には7種類になります。
まず、これを覚えるだけでも大変です。

最近は、②と④の合剤が、3種類も登場しました。
これにもそれぞれ、薬剤量に大小があります。
これまた、覚えるのが大変です。

さらに合剤ブームは、ついに「降圧剤」という枠を超えてしまいました。
つまり、何と「降圧剤」と「コレステロール」の合剤も登場しました。
スタチンと呼ばれるコレステロールのお薬との合剤には、4種類あります。

すなわち、理論的には4系統の降圧剤同士(合剤)でも、ものすごい
組み合わせがあります。
さらに、降圧剤とスタチンの組み合わせでも、ものすごい数になります。
単剤でも名前を覚えるだけでも大変です。
加えて、続々と合剤が登場すると、まるで記憶力ゲームのような世界になってきます。

もちろん、合剤のメリットは沢山あります。
2剤が1剤で済み、飲み忘れや飲み間違いが減る。
お薬代も両者の単純合計より少しだけ(?)安くなる。
相乗効果が期待できるかも?

デメリットは、新薬は、合剤でも発売後1年以内は2週間投薬しかできない。
武器が多くなり過ぎて、専門医でも全部を使いこなせない。
どれが一番いいのかの研究成果が出るまで少し時間がかかる。

もし1年間海外留学して帰国したなら、浦島太郎になるでしょう。
現場の医者たちは、薬の名前を覚えるのに四苦八苦しています。

単剤か合剤か、も常に考えながら、診療する時代となりました。
高血圧患者さんには便利な世の中になりました。
また、高血圧+高脂血症の患者さんにも便利です。
合剤をよく知り、この便利さを上手く利用したいものです。