《1066》 施設での看取り [未分類]

拙書、「平穏死・10の条件」は、老人ホームでの看取りの
様子から始まります。
創業10年以上の歴史があるその施設では、看取りは初めてでした。

初体験に、職員はみな凍りつき、壁に張り付いていました。
笑顔が消えて、こわばっていました。
入所者は平常ですが、職員が異常な状態でした。

その後、その施設では、数例の看取りを経験しました。
よくやく、慣れてきたようです。
それでもまだまだ、大変ですが。

「看取り講座」を、施設職員やご家族を対象に何度かしています。
しかし座学では、なかなか伝わりません。
先日、他の老人ホームで、このようなことがありました。

その施設でも看取りは初体験でした。
呼吸停止、との連絡を受けた1時間後に、到着しました。
お別れの時間を邪魔しないように、わざと、遅れて行ったのです。

部屋に入った瞬間、想像を絶する光景がありました。
巨大な男性職員が、小柄なおばあちゃんの上に馬乗りになり
激しい心臓マッサージが、繰り広げられていたのです。

おまけに、AEDまで装着されていました。
男性職員は、汗びっしょりでした。
私は、慌てて、それらを停止させました。

看取り講座で、言う事を忘れていたのです。

  • 心臓マッサージはしなくていいこと
  • AEDは装着しなくていいこと

その男性が、1時間も慣れない「運動」をして心筋梗塞で倒れないか
ということのほうが心配になりました。
汗びっしょりで、肩で息をしていましたから。

「AEDは、貴方が倒れた時に使うものですよ。
 看取りが決まっている人には、不要ですよ」
と、ちゃんと話しておくべきだったのです。

医療が無いとは、このようなことなのかと実感しました。
1から10まで説明しなくては。
その1が抜けていたのです。

しかし、その後、その施設も2例、3例と看取りを重ねると
少し慣れてきたようです。
「うちも看取りができる!」と、自慢しているそうです。

看取りをしている特養は、まだ1割程度だそうです。
その他は、最期は救急車で病院送り。
しかし、その病院が疲弊しています。

本格的な多死社会を迎える日本では、今後
施設での看取りが大きな課題になります。
そのためには、市民も理解が必要です。

スミマセン、朝からまた「死」の話で。