《0107》 総合医時代を暗示する「合剤」 [未分類]

「合剤」の時代は、総合医時代を暗示していると感じます。
総合医とは、特定の病気だけでなく全人的に診る医療です。

例えば、アムロジピンという高血圧のお薬と、アトロバスタチンという
高脂血症のお薬は、既に合剤となり、使用されています。

何気ない事実に聞こえるかもしれませんが、象徴的な出来事に感じます。
専門別に細分化され過ぎた医学が、少しだけ統合されたような……。
循環器の医者と内分泌代謝の医者が、1人で診てくれる感覚です。

そこにもし糖尿病のお薬も加わったらば、患者さんによってはさらに便利です。
しかし、専門領域別への細分化に慣れた医者は、悩むでしょう。
また、糖尿病科と循環器科の縄張り争いになるかもしれません。
合剤は、今後も続々と登場するようにも思いますが、実際は簡単ではないようです。

Aという既存薬とBという既存薬を組み合わせて、ABという合剤を作ったとしましょう。
厚労省は、ABというお薬は全く新しい薬と考え、新薬同様の審査を求めます。
3段階もの厳しいチェックに合格して、「合剤」が初めて「新薬」として認可されます。

確かに、ABとなった途端に、効き目が落ちたり、逆に3倍になるかもしれませんね。
規定の試験を経なければ認められませんので、ハードルは低くありません。

高血圧も糖尿病も胃潰瘍も不眠症も診る医者は、「総合医」と呼ばれます。
あるいは「かかりつけ医」と呼ばれたり、「プライマリケア医」とも呼ばれます。

今、医者の間では、この「総合医」の是非がホットな議論になりつつあります。
患者さんにとってよいことでも、「各医者の専門領域を侵す」と見なして「総合医」を
快く思わない医者も沢山います。

しかし、医者とは、元々は、総合医だったはず。
専門の垣根を越えた「合剤」の登場は、はからずも別の大きな意味を持つ気がしてなりません。