《1077》 桜が見られるのは6人に1人です [未分類]

私が介護施設に入って、まず思う事といえば、
外に連れ出してあげたいな、ということです。
みんな外出したいだろうな、なんて感じます。

施設長に、できるだけお散歩に連れ出して欲しい
などいつもお願いしています。
しかし、返ってくる言葉は、いつも同じ。

「忙しくて、そんな暇は無い」

そう、介護職員はとても忙しいのです。
食事介助、排泄介助、入浴介助などで、とても

お散歩の付き添いなんて暇は無いようです。

「長尾先生は、暇そうでいいですね」
なんて半分嫌味を言われます。
そんなに暇でもないのですが・・・

とにかく、介護職員は忙しいようです。
病院職員と似ています。
病院の看護師さんもよく「忙しい」を連発されます。

何が忙しいといえば、バイタルチェックと記録です。
あのパソコン画面に向かっているのは、記録のため。
記録が無いと仕事をしたことにならないのが、現代。

本当は、お喋りをしたり、マッサージをしたり、
一緒にお散歩できればいいのですが。
とてもそんな時間は無いようです。

東京では先週末に桜が満開でした。
しかし関西は、まだ3分咲きです。
どうしてそんなに差があるのか不思議です。

この季節になると、私もスタッフ達もどこかソワソワ。
毎年恒例の、在宅患者さんとのお花見があるからです。
花の咲き具合や天候が、今からとにかく心配なのです。

施設の職員に、「入所者をお花見に」と言うからには、
在宅患者さんとお花見をしなければなりません。
人によっては、まさに一期一会の花見なのです。

花見を待ち切れずに逝ってしまった
患者さんの顔が何人か浮かんできます。
「先生あと1週間で、一緒に花見ができたのに」と。

末期がん患者さんの平均在宅期間は、約2カ月間です。
そう、桜の季節に当たるのは6分の1の確率なのです。
そこが、老衰の方と末期がんの方との違いです。

花見をしながら、スタッフ達は患者さんのために芸をします。
1回限りの、患者さんのためのサービスです。
実行委員会は昼休みに、いろんな練習をしています。

そんなこんなわけで、この季節は、ソワソワしているのです。

《PS》
松山に来ています。
松山は、桜が満開。

今日は、一番大きな会場で昼休みの1時間、
「平穏死・10の条件」で、講演をします。