《0108》 家庭血圧と来院時血圧は、かなり違う [未分類]

猛暑の中でも、血圧が高い人が、沢山おられます。
診察室で、160/90もある方は、必ず何か言い訳をされます。

①「家では、いつも130と低いのに……。オカシイな?」
②「先生の前に来たら、上がるですよ、ハハハ」
③「診察時間に間に合うように早く歩いて来たからです」

なかには怒り出す方もいます。
④「そんな血圧、言われたのは生まれて初めてです」
⑤「私はずっと低血圧だったのに!」

診察室で医者が測る血圧(来院時血圧)と、自宅で測る血圧(家庭血圧)は、
かなり差があることが分かってきました。

自宅で測る場合、朝起きて、排尿してご飯を食べる前に座って腕に巻く血圧計で測ります。
夜も測るなら、寝る前に測ります。
家庭血圧より、来院時血圧の方が高いのが、普通です。
その差は、10~15にも及びます。
両者はかなり違って当たり前なのです。

私は、患者さんに、単純化して家庭血圧の正常値は130/80(時に、125/75)で、
来院時血圧の正常値は140/90ですよ、と説明しています。
さて、このような観点から先ほどの言い訳を見直してみましょう。

①は、自宅血圧の130は低いどころか、高い方に入ります。
②は、確かに、白衣高血圧の要素が加味されたのかもしれません。
③は、普通に歩いた後は、むしろ血圧は低下する人の方が多いのですが。
④は、はじめから血圧が高い人はいません。年とともに上がるのです。
⑤は、人間は皆最初は低血圧です。

なんて、真面目に説明しますが、怒り出す人もいます。
「先生は、そうやって病人に仕立て上げて薬を出したいんだ」と警戒されることも。

血圧手帳をお渡しして、「血圧の観察日記」をつけてもらい、一緒に眺めます。
数字は正直です。
そのうちに「血圧」というものと友達になってくれます。

そうこうしているうちに、家庭血圧と来院時血圧は、違うものだ、ということを
少しずつですが、理解してもらえるようになります。
血圧は、刻一刻と変動します。
正確に言うと一拍ずつ違います。
固有の値だと思っている人が多いですが、1日の中で大きく変動します。

何をもって、その人の血圧とするのか?
その人の、「血圧」を知ることだけでも、大変なことです。
来院時血圧よりも家庭血圧の方が信頼性が高いことが分かっています。
「家庭血圧をもっと知ろう!」という時代になりました。