《1084》 骨折は自然治癒してしまうケースも ―― 施設入所者の転倒(その3) [未分類]

転倒し肩がパンパンに腫れている施設入所者さんを、翌朝、
施設の職員さんが当院に運んで頂き、レントゲンを撮りました。
職員さんは、ただでさえ少ないので1人に臨時出勤してもらって。

レントゲンを撮ると上腕骨の上の端が見事に折れていました。
素人が見てもハッキリ分かる、骨折像です。
「ああ、やっぱり」という感じです。

しかし当の本人は、いたって元気です。
歩けますし、喋れますし、食べられるのです。
腕を動かすと痛がりますが、手の平の開閉もできます。

認知症になると痛みを感じるのが鈍くなるのでしょうか。
骨折している割には痛がりませんし、笑っています。
認知症の人ががんになった場合も、同じように痛みが少ない。

レントゲンの結果を、携帯電話で長男さんに伝えました。
長男さんは、「先生、そのまま様子を見てください」と
言われたので、そのまま様子を診ることになりました。

1カ月ほど、肩を少し落としながら歩いていましたが、
3カ月も経つと、骨折の影響はすっかり無くなりました。
早く言えば、機能障害も残さず、自然治癒したのです。

実は同じような経験を何度かしてきました。
施設の職員はみなビックリですが、ちなみに
一番驚いたのが整形外科の専門の先生でした。

長男さんが「このまま様子を診る」という選択をされたので
自然治癒が実現しましたが、実際なかなかそうはいきません。
家族、施設、医師の3者が同意しないと自然治癒はありません。

振り返ってみると、今回なんのためのレントゲンを撮ったのか。
実は、施設の職員さんたちを納得させるためでした。
長男さんは「レントゲンも要りませんよ」と言われていました。

レントゲンを撮ろうが撮らまいが、入院や手術や固定という選択肢が
無いこと、不可能なことを、長男さんは経験から知っていたのです。
そう実は、レントゲン検査自体も本当は要らなかったことになります。

《PS》
満開の桜が雨によって散っていきます。
誰も見ない散り際を、じっくり眺めています。
連日連夜、在宅で旅立たれた患者さんを想いながら。

今日の午後は、バレーボールの柳本監督と一緒に
認知症に関する講演です。
骨折の話もするかもしれません。

明日は、福岡で講演しています。
大きな病院さんに呼んで頂きました。
とんぼ返りですが、低気圧の影響が心配です。