《1085》 骨盤骨折しても1日で歩いた! ――施設入所者の転倒(その4) [未分類]

今日は、別の施設入所者の話をしましょう。
施設内で転倒されたので急遽往診しました。
歩けないので、大腿骨頚部かと思いました。

家族に連絡を取り、レントゲン撮影の是非を聞きました。
家族は、「撮ってください」とのこと。
本人は「痛い、痛い」と叫ぶだけ。

レントゲンの結果は、恥骨骨折でした。
恥骨とは、骨盤を構成している骨です。
完全に折れ、段違いになっていました。

折れた断端が膀胱や腸管に刺さらないのかと
思うくらい、しっかり「折れて」いました。
整形外科の専門医は入院、手術と言いました。

しかし自己主張の強い、その90歳代の認知症の方を
入院させることは、過去の経験から至難の業でした。
ご家族も「このまま寝たきりになっても仕方がない」と。

これまで散々、徘徊で大騒ぎになってきた歴史があるので、
これで大人しくなると、喜んでいるようにさえ見えました。
結局、何もせず施設でそのまま様子をみることになりました。

次の日、様子を見に行って、眼を疑いました。
自分で歩いて、ウロウロしているのです。
いつもの笑顔で私を迎えてくれました。

完全に折れて段違いになっているのに、歩いている!
整形外科の専門の先生も「信じられない!」と絶句。
しかし歩いているものは歩いているので仕方が無い。

歩きまわる人に「じっとしておれ」とも言えません。
引き続き、そのまま様子をみることになりました。
家族はむしろがっかりしているように見えました。

「これで大人しくなると思っていたら、
 たった1日で歩けるようになるなんて」と。
信じられなかもしれませんが、本当の話です。

骨折を1日で克服してしまうその高齢者に、
「生命力」を感じました。
入院も手術も、彼女にはなんの関係も無かったのです。

3ケ月ほど経過して、ひどい恥骨骨折したことすら
忘れかけていたある日、その方がまた転倒されました。
今度は、前回と違い、相当「重症」のようでした。

(続く)

《PS》
昨日は、前・神戸大学副理事長の横野浩一先生が
「糖尿病と認知症」のお話をされたあと、
不肖、私が「最期まで地域で生きる」という話をしました。

その後、バレーボールの柳本昌一監督の話を聞きました。
その感想は、一言で言うと「面白すぎる」。
監督は、吉本でも食べて行けると思える位、楽しい方でした。

今日は、福岡の大きな病院さんで講演します。
病院さんが心配ではないかと、心配しています。
「長尾が病院の悪口を言わないか?」と。

大丈夫です。
誰が聞いても納得できる話をしたいです。
今日も頑張ってきます。