頸椎を損傷して全身麻痺になり、てっきり死ぬかと思っていたら、
4週間目に寝がえりをうち、90歳の生命力に本当に驚きました。
それでも3食ともベッドの上で、介助食で過ごしておられました。
ある日ベッド柵の隙間から転落しそうになりました。
正確に言うと、ベッドから降りようとされたのです。
驚きました。
施設の職員は常に個室で見張っているわけにはいきません。
ベッド柵を頑丈に固定し、柵の上に少し囲いを造りました。
ベッド柵を乗り越えそうな生命力をなんとなく感じたから。
ベッドがまるでボクシングのリングのようになりました。
柵と柵の間は、太いゴムで結ばれて、絶対にベッドから
飛び出ることができないように、工夫がされていました。
ところが、90代の女性はその柵を乗り越えたのです!
そしてベッドの横に転落されたのです。
「転倒→骨折」の6週間後は、「転落」でした。
さすがに私も驚きました。
慌てて、ベッド柵の高さが追加されリングが強化されました。
しかしそれでも、彼女は、そのリングを乗り越えたのです。
ちょっと信じられません。
全身麻痺で死ぬはずが、高いリングを乗り越えた!
小さな茶台を踏み台にして床に降りて這っていたのです。
こうなるともう高くしたベッド柵は意味がなくなりました。
彼女がベッド上と床を自由に移動できるようにしました。
ここでひとつ、私や施設職員に大きな迷いが生じました。
リハビリをするかしないかです。
リハビリでまた歩けるようになればまた転倒するでしょう。
結局、家族のご意向に沿う形でリハビリも行わないことに。
しかし8週間目には、ついに彼女はつかまり立ちをしました。
ベッド柵につかまりながら、自力で確かに立ちあがりました。
まさかこんな日が来るとは、100%思いもしませんでした。
その翌週には、ヨチヨチ歩きですが、なんと自力で歩きました。
素晴らしいことです。
頸椎損傷による全身麻痺なのに自分で歩いているのですから。
恥骨骨折も頸椎損傷も、入院しないで乗り切った彼女は
現在も、昔のように施設内をヨチヨチ歩き回っています。
施設職員は大変でしょうが、本人はいたって脳天気です。
入院しないで、と書きましたが本当は
入院しなかったからこそ治ったのかもしれません。
ちょと常識が変わりそうですか?
結局、入院しなかったのが勝因だと思います。
ご家族の勇気ある決断が、いい方に作用しました。
自然治癒力の素晴らしさを実感できた女性でした。