《1088》 転倒、骨折後に来る大きな選択 ―― 施設入所者の転倒(その7) [未分類]

桜が散ってしまって、寂しいです。
その割に肌寒いのは、歳だから?
毎日、外来に在宅に看取りに大忙しです。

さて、施設入所者が尻もちをつく場合がよくあります。
慌てた介護スタッフから電話がかかってきます。
まず、頭を打っていないかを聞きます。

次に歩けるかどうかを聞きます。
歩けなければ、大腿骨頚部骨折か腰椎圧迫骨折を疑います。
直後にレントゲンを撮ってもよく分からない時もあります。

90歳代のその女性は、滑って尻もちをつきました。
翌日のレントゲンでは第3、4腰椎圧迫骨折でした。
腰が激しく痛むため、寝返りも打てなくなりました。

ご家族に電話をして事情をお話ししました。
2週間程度は痛がるでしょう、と。
1カ月かかるかもしれませんよ、とも。

すると家族は、入院を希望されました。
ご希望に従い、中規模の病院に入院させました。
二度と会えないかな?と思っているうちにその人を忘れました。

2年ほどたって、商店街でその家族とバッタリ出会いました。
「お母さん、元気になられましたか?」
「いえ、あれから1年ほどして亡くなりました・・・」

入院して1カ月ほど安静にしていたら、認知症が進み、
食事も食べられなくなったそう。
間もなく、胃ろうを造設されたそうです。

その後、次の病院に転院し、半年ほどしてから、
誤嚥性肺炎で亡くなられたそうです。
まあ、よくある話ですが・・・

寿命といえば、寿命。
まあ、こうなることは分かっていました。
施設で寝ていても同じだったのかもしれません。

大腿骨頚部骨折で入院された患者さんも同じ経過でした。
手術は成功したが、寝たきりになりました。
胃ろうができました・・・

施設の方が転倒された場合、入院を決めるのはご家族です。
これまで書いたように施設で様子を見ることを選択される家族と
病院へ入院を希望される家族の、ふた通りの家族がおられます。

入院を選択された場合、
「ああもう会えないのだ。さようなら」と心の中で呟きます。
実際その通り、この世の別れとなるのが「転倒」なのです。