《1102》 なにげない一言が人の運命を変える [未分類]

9歳から26歳まで17年間も引きこもりだった
タロー君の認知症との人と出会いについて書きます。
第1098回に書いたお話の詳細です。

学校に行かないタロー君は、発達障害として扱われました。
あるいは精神障害者として精神病院に無理やり入れられ、
沢山の薬をもられたこともあったそうです。

26歳のある日、市の障害者の相談員が民家を使った
デイサービスでのボランティアに誘ったそうです。
どうしてデイサービスだったのかは知りませんが。

そこで、彼は認知症の人たちと生まれて初めて出会いました。
運命の出会いだったのです。
タロー君も認知症の人も、ピュアなもの同士。

タロー君は17年間、自宅でパソコンに入り浸っていました。
パソコンの中では自分なりにいろいろ勉強していたそうです。
古典落語の世界にもハマっていたそうです。

そんなタロー君のパソコン技術がデイサービスで役立ちました。
入所者の犬の写真をパソコンに入れて、画面上で犬を動かした。
それだけで、犬好きな認知症の人に真っ先に気に入られました。

タロー君は、折り紙も得意です。
薔薇の花を、折り紙で造れます。
認知症の人の目の前で実演したら、おおウケでした。

学校に行っていなかった時間に、インターネットで
取得した知識と技が、デイサービスで開花しました。
そして3年前のバリアフリー展で運命の出会いがありました。

ある展示ブースで、彼は1枚のチラシを見つけました。
認知症の人の家族を支援するあるボランテイア団体
(NPO法人)が紹介されていました。

その団体のホームページに、早々にメールを出したそうです。
「僕、タロー君といいますが、見学に行ってもいいですか?」
いきなりの変なメールにそのNPOの理事長は驚いたそうです。

そこから認知症の家族を支える会の人達と彼は出会います。
世間の人には、認知症は未知の世界かもしれませんが、
タロー君には、そんな予備知識すら無いことが幸いしました。

世間から遠ざかっていた人と認知症の人には共通点がありました。
お互い似たような境遇なので、交わりやすかったのかもしれません。
タロー君はそのNPO法人で自分の役割を見つけることができました。

発達障害や不登校、引きこもりの子供達は、感性がピュアです。
打算がありません。
認知症の人も同じなので、お互いが楽なのでしょうか。

タロー君を世間に出るきっかけを作った市の相談員さんに
私は「愛」を感じました。
タロー君の素質を見抜いて、認知症の人を紹介したのです。

タロー君が醸し出す「愛」が、認知症の人に響いたのです。
90歳代の認知症の人と20歳代のタロー君の交流風景は
横から見ていても、なんとも微笑ましいものです。

息子でもない。
恋人でもない。
とても愛おしい存在のようなまなざしが、印象的です。

なにげない一言で、人の運命は変わるものなのですね。