《0112》 医療と平和運動 [未分類]

この季節になると、広島・長崎のドキュメンタリー番組に釘づけになります。
戦争や原爆については、知っているつもりでも、知らないことだらけです。
今回、アメリカの要人が初めて広島の式典に参加されたのは、前進かな。

30年以上前の医学部1年生には、哲学の授業がありました。
夏休みの宿題は、ウエレサーエフ著「医者の告白」という本の読書感想文。

この本が問うた命題だけは、鮮明に覚えています。
医者が病気を治すと、患者は長生きする。
患者が長生きすると、医療費で国が困る。
その悩みの中で、診療している、という内容でした。

メタボ健診は、医療費削減のために作られた国家戦略ですが、長生きしたら、
逆に医療費が増えるじゃないか、という指摘もあります。
それ以前に、メタボを減らすこと自体が可能かどうかも疑問ですが。

タバコ問題も同じです。
禁煙本を出版したり講演をしたりしていると、エライ先生から怒られました。
「禁煙して長生きしたら、医療費が膨らんでしまうじゃないか!」と。

人間は、この世に生まれた限りは、長く生きたいもの。
せめて、自分自身や愛する人だけでもそうありたい、と願います。
この人間の限りない欲望が、医学と医療を進歩させてきました。

しかし、医療が持つ本質的な課題を、根底から覆す命題があります。
それが、戦争であり、その命題に抗する平和運動です。

多くの元気な若者が自ら死んでいった現実。
一瞬にして多くの命を奪い、長く後遺症を残した爆弾。

それらの事実の前に立つと、「医療」という文字が、つい霞んでしまいそうに
なるのが、この季節です。