《1120》 ただの薬が悪さをするケース [未分類]

昨日は、千葉県鴨川市で目覚め、東京で朝から夕方まで会議をして
夜は、大阪でゴルフ仲間が集う大きな宴会に参加していました。
連日、暴飲暴食で、医者の不養生そのものです。(恥)

以下、昨夜の宴席で隣に座られた、初老の男性と交わした雑談です。

彼はコレステロールが高くて、某有名病院にかかっていました。
ある時から手足がしびれて、階段が登れなくなり、
握力が低下してゴルフクラブも握れなくなったそうです。

インターネットで調べたら、筋ジストロフィーやALS
(筋委縮性側索硬化症)という病名が出て来たそうです。
そこで神経難病だと自己判断し、神経内科を受診したそうです。

CTやMRI、PET、胃カメラや大腸カメラ、筋電図や脳派、
腹部や心臓のエコーなど実に多くの検査をしたそうです。
検査代の自己負担だけで、15万円もかかったそうです。

その間、筋力低下の症状はひどくなるばかり。
赤い尿が出て、腎不全と診断、透析が必要と言われ
腎臓内科にも回されたそうです。

黄疸も出てきて、外出時にはお化粧をしていたと。
髪の毛やまつ毛も抜けてしまい、皮膚科にも回されたと。
そうしているうちに寝たきりに近い状態になりました。

そして、ついに死まで覚悟されたそうです。

結局、彼は神経難病ではなく、コレステロールのお薬の
副作用である「横紋筋融解症」という病気と判明しました。
治療は簡単。その薬を止めるだけです。

薬を中止後、筋力低下も黄疸も徐々に改善しましたが、
2年たった現在も少し後遺症が残っているそうです。
お薬が原因と分かるまで3カ月もかかったそうです。

スタチンの副作用として、「横紋筋融解症」はあまりにも
有名ですが、私自身は実際に目にしたことはありません。
「横紋筋融解症」は、種々のお薬や座滅でも起こります。

患者さんにこの副作用を説明する時には、宝くじに
当たるような確率である、といつも説明しています。
私は20数年間、1人も診たことがないのですから。

通常、お薬を飲み初めて、数カ月以内に起こることが
多いそうですが、彼の場合は、3年以上が経過していました。
CPKという酵素が上がりますが彼の場合は2000程度。

彼の話を聞きながら、いろいろなことを思いました。

まず、ネットで神経難病だという思い込みをしたこと。
それが受診した神経内科で大量の検査を要した原因に。
腎臓内科や消化器内科などかなりの遠回りをしました。

もしかかりつけ医がいたら、すぐに診断がついたでしょう。
あるいは病院の総合診療医なら、すぐに気がついたでしょう。
なのに薬が原因であると気がつくまで3カ月もかかっていた。

「死ななくて良かったですね」

思わず、そう言ってしまいました。
ほかに言葉がみつかりませんでした。

くすりは、リスク。

すごく単純ななことに気がつくまで思いのほか
時間がかかったり、遠回りすることがあります。