《1143》 捨て身で笑わせるホスピタリティ [未分類]

甲府で開催された研究会にお招き頂くという名誉と幸運に
恵まれた週末でしたが、大きな収穫がいくつかありました。
今日は、そのうちの2つだけ、ご紹介します。

ひとつは、施設ホスピスのスタッフのホスピタリテイです。
本当に痒いところまで気がつく気配りに感心しきりでした。
たとえば、前夜祭でのひとコマです。

全国から集まったお客さんをもてなすために、自分たちが
持つ芸の力を100%発揮してくれていました。
指導的立場の某ホスピス医は、変装して手品を披露されました。

忙しい診療の中で、とても練習する時間など無かったでしょう。
ほんとうに素人手品そのものでした。
失敗か成功か分からないから面白いという手品。

しかし必死でみんなを楽しませるために自ら芸をされた。
新聞紙にコップの水を入れて、まだ出すという手品が、
なんとか成功したときは思わず拍手喝采になりました。

別の在宅ホスピス医は、替え唄を歌いながら甲府ワインを
ついで回っていました。
桜田淳子さんの「私の青い鳥」の、変な替え唄でした。

「クッククック、クッククック、ようこそ甲府へ、
 ほうとうたべていけ・・・」
おかしくて、食べたものを吐きだしそうになりました。

翌朝、湯本温泉の朝風呂に入っていても、あの変装姿と、
あの替え唄が、頭の中を駆け巡っていました。(笑)
それほど強烈な素人芸を披露して頂きました。

私が感じたのは、このお医者さんたちは患者さんのために
自分を犠牲にできる人たちなんだな、ということでした。
自分は捨て身で、相手を笑わせることに徹せられる医者。

施設ホスピスの偉い先生と聞くと、どこかお高くて、
かしこまったイメージを持つのは私だけでしょうか。
しかしそうした先入観は、一発で吹っ飛びました。

彼らのホスピタリテイを見ていてパッチアダムスを
思い出してしまいました。
道化師、そうピエロです。

以前、このブログで「死に顔ピース」を紹介しました。
山口県の岡原仁志先生をモデルにした演劇の名前です。
彼は島で、「コスプレ先生」と呼ばれて愛されています。

甲府の緩和ケアスタッフ達にも同じ匂いを感じました。
患者さんのために、我が身を捨てられる。
当たり前のことかもしれませんが、なかなかできません。

大会長の横山宏先生は、86歳になっても「がんサロン」
で、がん患者さんの悩みに寄り添っておられました。
どの写真を見ても、ちゃんとネクタイをしていました。

自分が86歳になった時に、そんなことができるのか?
到底できないでしょう。
いや、そこまで生きないな。

とにかく、今回、甲府で医の原点を見た思いがしました。

医療は患者のためにある。
医者のためにあるのではない、という当たり前のことを。