《1144》 氷山の一角か? お年寄りに怖い低血糖 [未分類]

昨日、お昼前に90歳代の高齢者の緊急往診に呼ばれました。
伺うと、3時間前から冷や汗をかいてボーっとしているとのこと。
前日、最初に訪問した時は、笑顔で冗談を言っていたのですが。

在宅医療開始後、たった2日目に、脳梗塞?
まさかと思いながら、外来中だったのでその場を離れました。
30分後応援を依頼した訪問看護師からメールが届きました。

「血糖が36、ブドウ糖を注射したら意識は戻りました」

その高齢者は病院からキツい血糖降下剤をもらっていました。
前日私が訪問した時にそのことを聴くことを忘れていました。
お薬手帳を見るのが大原則なのですが、それも忘れていました。

あとで正式な検査結果が帰ってきましたが、
血糖値は18でした。
一般に、血糖値50以下を低血糖、と呼びます。

しかし訪問看護師が、全部、カバーしてくれました。
お薬の副作用という大原則を、一瞬で見抜いてくれました。
それにしても、90歳代にあんな薬が出ているなんて・・・。

午後の外来をしていると、これまた90歳代の患者さんが
車椅子に乗せられて、娘さん2人に連れてこられました。
娘さんの相談は、親の認知症と幻覚、被害妄想でした。

問診するとその方も糖尿病でインスリンを2回打っていた。
血糖も、1日3回も娘さんが、自己測定しているそうです。
そして、毎日、必ず、低血糖を起こしているそうです。

「これまで数えきれない回数の低血糖を起こしました」
何も知らない様子の娘さんが、何気なくそう話されました。
その低血糖の繰り返しが、この認知症の原因なのですが。

もちろん長年の糖尿病は、認知症の最大の危険因子です。
しかし日々繰り返している低血糖はもっと危険因子です。
病院の若い専門医は、血糖値しか診ていなかったのかな。

治療は簡単。
インスリンを止めて、DPP4阻害薬に切り替えるだけ。
日々の低血糖を無くすだけでも、認知症の進行は防げる。

このように、低血糖は、日常診療の中に溢れています。
私が気がつくのは、氷山の一角だと思います。
高血糖も怖いですが、年を取ると低血糖はもっと怖いのです。