《1150》 怪我の功名 [未分類]

5月28日のこのブログで、腓骨骨神経麻痺(たぶん)
の50代の男性患者さんをご紹介しました。
実は、昨日、2週間ぶりに彼が受診されました。

松葉杖をついていたのに、驚きました。
聞くと、父親の持ち物を拝借していた。
まだかなり左足を引きずっていました。

彼は少し落ち込んでいました。
思うように歩けないからです。
松葉杖を使って、普通の人の3分の1の歩行速度。

早く歩こうとすると、すぐに転ぶそうです。
時間をかけてなんとか会社や当院に歩いて来られます。
そんな彼との雑談を紹介します。

足が不自由になって信号を一気に渡れなくなったそう。
普段は何気なく渡っていた信号を、ギリギリで渡ると。
高齢者の気持ちが良く分かるようになった、とのこと。

あと、電車や地下鉄に乗る時がとても不便だそうです。
エレベーターの場所が分からず、大きな駅の構内では
迷子にたって、泣きそうになるそうです。

階段を降りないとエレベーターに乗れないところもあると。
「これじゃ、なんのためのエレベーターか分からない」と。
日本社会は障害者にまだ全然優しくない、とも言いました。

会社と自宅の往復が苦痛なので会社の近くにウイークリー
マンションを借りるかどうかについて、迷っていました。
障害者の気持ちが分かるようになったとも言われました。

普段当たり前に出来ていたことが、できなくなるという事故。
できなくなって初めていろんなことに気がつくのが人間です。
彼は「大変な災難ですが、得たものも大きい」と笑いました。

エライ災いですが、少し静かな時間を与えたようです。
彼は「怪我の功名」と言い少し笑いました。
私は「大難が小難で済んでよかった」と返しました。

足を組んだまま寝て起きる腓骨神経麻痺の今後は様々です。
2週間程度で回復する人、3ケ月で回復する人、逆に
回復の悪い方もおられます。

彼は、2週間前より半分程度回復した、と言っていました。
まあ1、2ケ月したら、かなりの回復がみられるでしょう。
思わぬ怪我の功名を今後の人生に活かしてくれたら嬉しい。