《1170》 「ガイドラインが曲者」から来る多剤投薬 [未分類]

日本人は、患者も医者も大のお薬好きだと思います。
多くの患者さんは、お薬をもらわないと納得されないし、
多くの医師は、お薬を出すことが仕事になっていている。

なぜこんな医療になったのでしょうか?

最近、ある宴席で内科の教授が言われました。

「ガイドラインが曲者なんだ」
「処方が足りないと、素人にあとで文句を言われるかも」

ガイドラインとは、各医学会が定めた治療指針のこと。
その時代に推奨されるべき標準的な治療法。
ガイドラインに沿った薬剤投与を行うべきと教えられます。

昔は、専門家に任せておけばいい、それで通った。
すなわち「俺がガイドライン」だったと。
しかし現在は、研修医も教授もガイドラインが教科書。

他の科の医師から見ても、ガイドラインに合っているか
どうかでその医師の仕事ぶりが判断されるとのこと。
そのガイドラインが、よく変更されるので気をつけるべしと。

医学の進歩とともにガイドラインに載るお薬の種類が増える。
また加齢とともに病気の数が増し、診察券の数が増えます。
年を取るとは、お世話になるガイドラインの数が増えること。

すなわち、時代とともに、多剤投薬は必然なのです。
多剤投薬を無くすには、相当なエネルギーが要ります。
「ガイドライン医療」に少しは反抗するわけですから。

多剤投薬になればなるほど、薬剤師さんの出番が増えます。
お医者さんは、すべての薬剤情報を管理しきれません。
ましてジェネリック医薬品が入ってくると、お手上げです。

医薬分業は、多剤投薬を乗り越えるためには必須です。
薬剤師さん無しでは、現代医療は成り立ちません。
今後、その傾向は加速するでしょう。

しかし、もし多剤投薬が無ければ薬剤師さんは要らないかも。
それを言うなら、医師も必要なくなるかも。
いや本来は、養生を指導するのが医師の仕事だったのだが。

もし、お薬が1つまでと決まっていたら。
もし、施設に入るとお薬が出せないとなったら。
もし、出すとしたら漢方薬のような合剤だけだったら・・・

いろんなことを夢想してしまいます。

そんなことになれば、薬剤師さんや製薬会社さんは困り果てます。
しかし不老不死は人類の永遠の夢ですから、それはあり得ません。
今日も新聞に「○○病を治す薬ができた」という文字が躍ります。

治る薬があると聞けば、その薬にすがりつくのは人間の性。
本当は治るのではなく、効果があるお薬というべきですが。
人類が存続する限りお薬と薬剤師さんは必要なのでしょう。

 ガイドライン医療と多剤投薬。

 臓器別縦割りという形態での医療の進歩。

 認知症で実際に飲ませる方法も考えなければいけない現実。

お薬を巡っては、医療の受け手である市民も一緒になって、
これらの問題を考えていただかないと解決しないと思います。
せめて、納得できるお薬との付き合いを目指したいものです。

今日から7月。
脱水に気をつけて、こまめな水分補給をしましょう。
元気でこの夏を乗り越えましょう。