《1186》 末期がん患者に18種類の薬、何のため? [未分類]

先日、ある大学病院から末期がんの方の
在宅医療を依頼されました。
退院の日に家に先に着いたので、待っていました。

タクシーから降りた患者さんは一人では歩けない状態。
しかし両手に大きな紙袋を大切に握りしめていました。
中身を聞くと、なんと退院時のお薬とのこと。

薬の数を数えたら、18種類ものお薬が入っていました。
血圧や糖尿病や血液サラサラのお薬に加えて、
胃腸が荒れないためという胃腸薬もたっぷり入っていました。

その患者さんは腸閉塞でお腹がパンパン。
とても、食べられる状態ではありません。
そこに抗がん剤も入っていたのでビックリ。

さらに驚いたのは患者さんの希望を聞くと
がんの痛みをなんとかして欲しいとのことでした。
18種類のお薬の中に、麻薬はありませんでした。

がんの治療に一生懸命になり、患者さんが食べられない
ことも、痛みで苦しんでいることも忘れられていました。
緩和ケアの充実が謳われていますが、これが現実です。

それにしても、食べられない、歩けない患者さんに
18種類ものお薬を出して、どうしようというのか。
私は、とりあえず全部飲まなくていいと言いました。

その代わり、貼り薬の麻薬を最少量から開始しました。
ステロイドの注射も併用し痛みは劇的に改善しました。
点滴はグッと我慢して、軽い脱水を待ちました。

1週間後には少し食べられるようになりました。
はじめて素敵な笑顔も見られ、ホッとしました。
退院時の大量のお薬は、まだ手つかずのままです。

大学病院の薬剤師さんは何故、止めてくれないのかな。
いや、お医者のやることは、誰も止められないのかな。
いろんなことを考えさせられました。

高齢者もそうですが、食べられない末期がん患者さんへの
多剤投薬問題も、たいへん困ったことだと思います。
勇気ある薬剤師さんの登場を期待しているのですが・・・

《PS》
明日18日(木)は、朝日カルチャーセンター新宿教室で
「平穏死・10の条件」についての講演をする予定です。
(午後1時から、案内はこちら。有料です)

この本が出版されて丁度1年が経過しました。
沢山の支持を頂き心から感謝申し上げます。

最近考えていることをお話いたします。
お時間のある方は是非お越しください。