《1206》 温泉と御馳走でプチ贅沢 [未分類]

徘徊や暴言や暴力などの「いわゆる周辺症状」にどう対応するか。
「いわゆる周辺症状」と書いたのは、他に言葉が無いからです。
便宜上、記憶障害などの「中核症状」と「周辺症状」に分けます。

よく認知症の人の在宅療養が難しいと言われるのは、
その周辺症状の対処法が、難しいからだと思います。
それが現代社会の共通認識でしょう。

80代の認知症の男性の在宅主治医を依頼されました。
最初は暴言、暴力が激しく、大小便も室内で漏す始末。
大声を出して凶暴なので、診察することもできません。

訪問診療に伺っても、話をすることも採血もできません。
もちろん周辺症状を鎮める薬を飲ませることもできません。
しかし3年の歳月を経て、そうした周辺症状は劇的に改善。

現在、別人のように穏やかに自宅で夫婦で暮らしています。

昨日の「放牧系デイサービス」に対して、今回は「旅行療法」。
その人は月1回ご夫婦で1泊2日の温泉旅行に行かれました。
その時に、ヘルパーさん2人を自費で雇われました。

夫婦は同じ温泉に入れませんから必ず男性ヘルパーさんが必要。
一緒に電車に乗り、温泉にはいり、美味しい料理を楽しみます。
どんなに機嫌が悪くても風呂と御馳走があれば機嫌が直ります。

はたして、定期的な温泉旅行は効果がありました。
体を温めると種々の病気がよくなる話はあまりにも有名。
HSPというタンパクが誘導され免疫能も上がります。

温泉は、昔からがんや難病など種々の病気に効果があり、
温泉療法学会という医学会もあるくらいです。
私は温泉は認知症自体にも効果があるのでは、と思います。

お薬は一切使わずに、むしろ以前飲んでいた様々なお薬を中止。
この旅行療法を毎月粘り強く続けることで見違えるように改善。
今では笑顔いっぱいで、デイサービス先でもすっかり人気者です。

旅行から帰ると楽しかった写真を見せて解説してくれます。
これが本当にあの人なのかなと思うくらい認知症状は改善。
この旅行療法はプチ贅沢をすることがコツです。

また一般の人と普通に混じることで、少し背伸びをされます。
いくら認知症だといっても、ちゃんとプライドがあるのです。
電車に乗った時には荷物を持って奥さんの手を引いています。

普段はそんなことは一切しませんので、早い話、外に出ると
ええ格好をしていることは一目瞭然ですが、そのええ格好が大切。

普通の認知症の人の家のカレンダーには、デイサービスや
ショートステイの予定が書き込まれています。

しかしその方の場合、必ず毎月、旅行の日程が書き込まれている。
毎回、行き先が違います。
介護者も一緒に楽しんでおられます。

認知症介護とは、移動すること、楽しむことだと教えられました。
このような家族旅行もいいですが、集団旅行はもっといいです。

毎年、寝たきり寸前の認知症の人と介護者を大勢引き連れて
北海道旅行を続けているというNPO法人もあります。
何度も紹介している、「つどい場さくらちゃん」です。

とにかく、どんどん外に出て普通の人と交わることで、
認知症の中核症状も周辺症状もビックリするくらい改善します。
毎日認知症の介護者からいろんなことを教えてもらっています。