《1207》 快・不快、好き嫌いは分かる [未分類]

「認知症になったら全てが分からなくなるの?
認知症って怖い病気ですね。やだやだ」。
ある研修医が大真面目にそう聞いてきました。

私は「認知症になっても決して全てが失われる訳ではないよ。
快・不快や好き嫌いはよく分かるんだ。むしろ普通のひとより
ずっと敏感になるから気をつけてね」と答えました。

どうも認知症=人格の崩壊・喪失と誤解している人が多い。
研修医がそうだから一般の人はもっと多いのでしょう。
崩壊どころか、人格はいたって平穏なひとが大半です。

正直、施設などに行くとカリカリしている介護者がいます。
一方、入所者たちは、いたって平穏だったりします。
どちらの人格が崩壊しているのか、と言いたくもなります。

「人格がすべて崩壊するので、早めに施設に入れておこう。
それが認知症のためにもいいはずさ」。
その想いで週末ごとに施設探しに奔走している子供が沢山いる。

本人はいたって呑気に生活されているのですが・・・

認知症という病気の本質って、何だろう?

そんなことを考えながら、外来診療と在宅医療をしています。
歳を重ねると記憶力や理解力が低下することは、ある意味、必然。
そして認知症の初期・中期は頭の中は「不安」で一杯になります。

認知症になっても、快・不快、好き嫌いは分かります。
ただ、昨日の記憶が無いので不安で一杯になるのです。
不安だけ支えることができれば、活き活きと生活できます。