《1208》 右脳と五感に働きかけるケアを [未分類]

認知症研究の第一人者であり、長谷川式テストで有名なあの
長谷川和夫先生は、一枚の絵を用いて認知症の本質を示された。

その油絵には、暗闇の中、自分の足元だけにスポットライトが
当たりながらも、たたずむ一人の老人の姿が描かれていました。

前も後ろも右も左も見えないが、足元(=現在)だけは見える。
それが認知症の本質、だと説明されました。

私たちは太陽の光や蛍光灯で周囲が見えるから安心して歩けます。
しかし自分の足元しか見えなければ、不安で一杯になり、
上手く歩けません。

認知症の方の脳の中とはそんなイメージだそうです。

川島英五さんの「酒と泪と男と女」という名曲は、
「忘れてしまいたいことやー」で始まります。
人間は嫌な記憶を忘れることができないので酒を飲むわけです。

しかし認知症になれば、嫌な記憶からも自然に解放されるので
ストレスが減るという、いい側面もあるのではないでしょうか。

認知症は相対的に右脳優位になっていると、長谷川先生は話された。
左脳とは理屈の脳、右脳とは感性の脳です。
人間は左脳と右脳のバランスを上手く取りながら、生活しています。

記憶や認知機能は、主に左脳の機能です。
認知症とは、左脳機能の低下ですから、
相対的に右脳が優位な状態になることです。

すなわち難しい理屈は分からないが、快・不快や直感的な
好き嫌いはむしろ普通の人より敏感になるのです。
そういえば、認知症の人は動物的に心理状態を察知します。

自分が好きな人には、即座に寄っていきます。
味覚障害や嗅覚障害は認知症の初発症状として有名です。
認知症になれば、味が全くわからない訳ではありません。

認知症の人を不味いレストランに連れていくとあまり食べず、
美味しいレストランでに行くと、パクパクと沢山食べます。
快・不快と同様、味もしっかり分かっているのです。

またその場の雰囲気も右脳がしっかりキャッチします。
認知症の人と接する場合、そのように右脳を意識することが大切です。

認知症の人の右脳に働きかけるケア、五感に働きかけるケアを
もっともっと意識したいと思います。