《1210》 徘徊にもちゃんと意味がある [未分類]

認知症には2つの側面があるそうです。
近い記憶が失われるという中核症状と、
徘徊や暴言に代表される周辺症状です。

たとえ記憶や認知能力が多少損なわれても、
それを助けてくれる人さえいれば
自宅でなんとか生活できます。

一方、一般的に徘徊や暴言などの周辺症状が
あるからこそ、在宅療養は難しいと判断され、
施設や病院に入れられます。

しかし周辺症状は、本当に困った事なのでしょうか?
そもそも、どうして周辺症状が起こるのでしょうか?
また何か意味があるのでしょうか?

「徘徊」を辞書で引くと「目的も無くうろつき回ること」と。
しかし徘徊にはちゃんと意味があるようです。
目的があるのです。

あるいは「ここは自分の居場所ではない」と感じているのです。
自宅であろうが施設であろうが、徘徊に対して昼間から
鍵をかけて部屋に閉じ込めることはよくないと思います。

監禁すると必ず元気がなくなります。
新しく施設に入所した方を観察しているとよく分かります。
徘徊には3つのタイプがあります。

  • (1)確信を持って出て行くタイプ。

トイレに行こうとするあるいは昼と夜を間違えて仕事に行こうと。
本人の気持ちを受け入れて、対応する態度を示すと落ち着かれます。

  • (2)不安そうにウロウロするタイプ。

これは生活そのものになかに原因があることが多い。

  • (3)実はブラブラ散歩をしているだけというタイプ。

これは介護者が黙って見守るか、一緒に散歩をすればいいのでは。

徘徊に共通する特徴は、なぜか左に曲がる人が多いそうです。
人間の脳はそのように出来ているそうです。

さて、夕暮れ症候群という言葉があります。
帰宅願望ともいいます。

これは夕暮れ時になると、「帰る、帰る」を連発すること。
介護職員には問題行動と記録されています。

しかし帰宅願望は介護自体を否定しているわけではなく、
介護されている自分自身を拒否している姿だそうです。

介護には上下関係があります。
介護する側と介護される側です。
しかし人間にはプライドもあります。

その関係性から逃れたいと感じることは自然なことだと思います。

ですから介護者は「帰るところなんてない!」と、叱るのではなく、
「ここにいてもいいんだよ!」という安心感を与えることが大切。

いずれにせよ、徘徊を見たら「この人はどのタイプで、
一体何をしようとしているのか?」と考えてみてはいかがか。
よくよく観察していると、必ず目的があって移動しています。

認知症の人の行動には必ず意味があると思っていいでしょう。
「周辺症状」や「問題行動」という烙印を押してハイ終わり、
ではなく周辺症状の意味を想像する態度が大切だと思います。

時に介護だけでは対処できず、抗精神薬というお薬を要する
ことも現実には少なからずあります。
しかしできるだけ最小限の量で最小限の期間に留めるべきです。

またマイルドな鎮静作用がある「抑肝散」という漢方薬が有用。
抗精神薬の種類や量が多いと、眠気のため1日中寝ていたり、
転倒の危険性が高くなり、なるべく避けたいものです。

以上、周辺症状の裏に隠された意味を想像し、
それに上手く寄り添えるケアを目指しましょう。
私自身、周辺症状から学ぶことがとても多い毎日です。