《0122》 なぜ高血圧を治療するの? [未分類]

なぜ、高血圧を治療するのでしょうか?
30年前なら、「脳出血」をさせないためでした。

現在では、脳梗塞や心筋梗塞など、血管が詰まる病気を起こさせないため。
さらに、慢性心不全や慢性腎臓病(最近、CKDと言います)を起こさないため。

慢性心不全とは、心臓の筋肉が伸びきって、心臓が大きくなりゆるんだ状態です。
坂道を歩くと息切れがしたり、何となくシンドイと感じたりする自覚症状の病気です。
全身のむくみや呼吸困難(起座呼吸)などは、重症になってからの兆候です。

最近は、血液検査で、BNPという心臓から出るホルモンを測るだけで、
簡単に慢性心不全の診断ができるという、大変便利な時代となりました。
20以下が正常ですが、100~200以上が病気だと私は思っています。

もちろん、胸部レントゲンや心臓エコーも大切な検査です。
しかし、そんな検査をしなくても、少量の血液検査で発見できる時代です。
慢性心不全になると、寿命に大きく影響するので、重要な病気なのです。

余談ですが、慢性心不全にも、二つのタイプがあることが分かってきました。
「収縮不全」と「拡張不全」です。

従来の慢性心不全と言えば、心臓が大きくなる「収縮不全」のことでした。
しかし、心臓が大きくならないタイプの心不全、「拡張不全」の存在が
最近判明しています。

高齢で高血圧のある小柄な女性に、この拡張不全型慢性心不全が多いのです。
もちろん、血液中のBNP値も上がります。
慢性心不全という、多い割にあまり知られていない病気をご紹介しました。

心不全という病名を説明すると、「縁起が悪い」と怒り出した方がいました。
どうも死亡診断書によく書かれる「心不全」という文字を連想したようです。

慢性心不全とは、加齢とともに増加する極めてありふれた病気です。
そして、高血圧治療の大きな目的の一つは、慢性心不全の予防です。
慢性腎臓病(CKD)の予防とともに、大変注目されています。