《1222》 ゴミ屋敷と火の不始末 [未分類]

在宅医療に従事していると時に“ゴミ屋敷”に遭遇します。
モノが溢れて“地層”のように“堆積”した上を歩きます。
そこに異臭が加わりますので、大変なことになっています。

その地層が通路の壁となっている家、
小動物が化石のように埋もれている家、
真新しい排泄物を踏んでしまう家まで様々なゴミ屋敷がある。

さらに何十匹のペットが生息する動物屋敷、
趣味で収集したお宝に埋もれているお宝屋敷もあります。
本人には命の次に大切なお宝でも、第三者にはゴミの山。

その山の主人を調べてみるとかなりの確率で認知症で
あることは、経験ある在宅スタッフなら知っています。
ご近所の方々も、その景観と悪臭に困り果てています。

「断捨離」という言葉をご存知ですか。
たしかに、捨てることは意外と難しいもの。
年を取れば取るほど、荷物が増えていくのが普通の人間。

駅で受け取ったテイッシュでさえ「もったいない」と
貯め込んでしまう私も、ゴミ屋敷予備軍なのかもしれません。
認知症の人に「なぜガラクタを集めるの?」と質問しました。

すると「もったいない」とか、
「持っていると落ち着くから」との答えが返ってきます。
そう、認知症の本質は不安でしたよね。

そういえば中年になると水を飲んでも太るという人も。
これは“倹約遺伝子”のスイッチが入るからです。
わずかなエネルギーを脂肪として蓄えようとした体質に。

また戦争を体験した世代は「倹約」が身についているので、
どうしても、ものを捨てられないそうです。
では家族や介護者はモノをどう処理すればいいのでしょうか?

他人にとってはゴミでも、本人にとってはあくまでお宝。
無理に片づけると、不信感を招くばかりで、逆効果です。
では、これまでどうしてきたのか。

本人に分からないように少しずつ片づければトラブルにならない。
一気に片づけようとしないことがコツです。
そんな作業を請け負っているケアマネさんやヘルパーさんに感謝。

さて、火の不始末も近所の人にとっては気になるところ。
水道や電気をつけっぱなしにしている認知症の人を見ると、
火は大丈夫? と、病気のことよりも心配になります。

認知症の人は、火の存在自体を簡単に忘れてしまいます。
昔、自分が訪問した1時間後に火事が出て焼死されたことも。
患者さん自身のタバコの火の不始末がその火事の原因でした。

だからといってタバコを禁止してもあまり期待できません。
ニコチン依存症からの離脱は、決して容易ではありません。
必ずと言っていいほど隠れて吸っています。

むしろ介護者がタバコに火をつけてあげて自分の目の前で吸い、
吸い終わりを確認するようにしたほうが、ましかもしれません。
火の問題さえなければ、独居の認知症でも在宅が充分可能です。

かといって台所作業を禁止するのも考えものです。
できれば火の出ないIH式調理器に取り変えたり、
火災報知機を設置してはいかがかでしょうか。

お風呂の空焚き対策ならガスの元栓を閉めましょう。
石油ストーブからパネルヒーターに交換してもいい。
とにかく、ご近所さんの見守りや協力が不可欠です。