先日、ある老老夫婦を訪問診療しました。
重度の認知症と軽度の認知症のカップル。
子供さんは夜遅くしか帰らず昼間は老老。
寝たきり寸前の妻を夫が介護している。
両方が90歳代。
こんなカップルが増えてきています。
訪問した瞬間に先週と全く様子が違いました。
両方とも寝た切りになっていました。
妻のほうは、完全にオムツになっていました。
1週間の間に何があったの?と驚きました。
偶然にも同じ日に2人が転倒したそうです。
それ以来、寝たきり状態になったとのこと。
何時頃に転倒したのか聞いてみました。
妻は午前3時に、夫は午前4時に転倒。
どちらもトイレに行こうとして転んだ。
その時の電気について聞いてみました。
2人とも部屋と廊下の電気を付けずに
トイレに行ったそうです。
高齢者の転倒は、毎日、沢山あります。
すべて部屋の中、そして就寝時間帯です。
電気を付けずにトイレに行こうとしたと。
みなさんも、片足立ちで実験してみて下さい。
電気をつけずに立つのと、つけているのとでは大違い。
もし電気をつけないと格段にふらきます。
我々は、目から入る情報で姿勢を修正できます。
もし目が見えないと、視覚による修正ができません。
ですから電気をつけないと、格段に転倒が増えます。
さっそく息子さんに、紐を買いに行ってもらいました。
蛍光灯のスイッチ紐に紐をつけて延長しました。
原始的ですが、長いスイッチに変わりました。
部屋や廊下の蛍光灯の電気は夜間にトイレに
行く時も付けてもらうようにお願いしました。
おそらく、転倒リスクは激減すると思います。
認知症ケアの要点は、転倒防止対策。
そのためには、歩行時の照明が大切。
たった1本の紐で平穏な日々が続きます。