《0123》 大動脈瘤の記憶 [未分類]

高血圧症は、動脈硬化を起こします。
医学部1年生の解剖実習が印象に残っています。

高血圧と喫煙者だったと聞かされたご遺体でした。
大動脈を触ると、水道管のように硬くゴリゴリしていました。
お腹の中には、破裂していない大動脈のコブ(瘤)がありました。
あの感触は、今でも忘れません。

石原裕次郎氏の病気が報道されて以来、大動脈瘤は大変有名な病気となりました。
レントゲンやエコーで発見すると、患者さんはパニックになられます。

実際、これが破裂して、亡くなった方を何人か診てきました。
破裂する場所は、必ず、と言っていいくらい、トイレか浴室です。
急激な血圧上昇が、「血管壁を裂き」、「瘤を破裂」させます。

破裂する寸前で、事なきを得たこともありました。
近所の病院で肩コリと診断されたが納得いかないと、往診の依頼。
私は、脈診だけで「大動脈解離」と勝手に診断しました。

夕方、心臓外科に搬送して徹夜の手術で命を救っていただきました。
現代医療のレベルの高さを、改めて実感しました。
あれから10年。
その患者さんは、今も元気に通院されています。

先日、友人が血管外科の教授に内定したとのことで一緒に飲む機会がありました。
大動脈解離の緊急患者が来たら、12時間の手術に入るのだと。
50を超えても不眠不休で頑張っている同級生に、思わず敬意を表しました。

最近は、腹部大動脈瘤に対して、「大動脈ステンティング」というカテーテルによる
内科的治療法が開発され、その恩恵に与かれる患者さんも増えました。
動脈硬化の治療には、内科医も外科医も24時間体制で取り組んでいます。

いずれにせよ、大動脈瘤という病気の源流には「高血圧症」が流れています。
私は、その源流を何とかしようと、日々、悪戦苦闘しています。
ちなみに、禁煙指導も、その大きな柱です。