肺結核と肺がんの鑑別は、意外に難しいです。
「そんなー」という声が聞こえてきそうですが、
臨床現場では、どちらか分からない人がいます。
私と同じ年のAさんは検診で肺に異常を指摘されました。
昨年まで何も指摘されなかったのに、いきなり異常です。
詳細なCT検査が行われました。
気管支鏡検査を2回行いましたが、がんは出ませんでした。
きっと病変が小さすぎて、上手く採取できなかったのか。
そうなるとCT画像だけで判断をしないといけません。
彼はそのCT画像を持って、肺がんの権威を渡り歩きました。
その世界では、有名な先生ばかり約10人です。
全員が、肺がん疑いといい、結核疑いはゼロでした。
ちなみに私のところにも、がんかどうか聞きにきました。
どう見てもがんだろう、と答えました。
専門家10人と同じ答えであることは、後で聞きました。
結局、Aさんは、肺の一部を外科的に切除しました。
病理検査の結果は、はたして、肺結核でした!
臨床現場では、このようなことは起こり得ます。
膵臓がんと慢性膵炎も見間違うことがあります。
肝臓がんと肝硬変も同様です。
切ってみたら違った、なんてことはあり得るのです。
結局、Aさんは、取られ損でした。
また、私を含めて11人全員が誤診でした。
しかしこれも臨床であり、医療の不確実性なのです。
Aさんは誤診の可能性も納得の上、手術を受けました。
このような結果も、シミュレーション済み、でした。
高齢者であれば、手術をせずに様子を見たでしょう。
しかしAさんは若く、がんであれば早く処置したい。
そういう想いもあって、このような経過になりました。
肺結核と肺がんの鑑別は、決して簡単ではありません。