《0125》 心臓ペースメーカーという役立つ機械 [未分類]

脈は少なければ少ないほどよい、と書きました。
ただし、限度があります。
スポーツ選手でもないのに40以下なら、それは危険な病気です。

開業当時、狭い急な階段を2階までフーフー言いながら登って来られた
初診の70歳代の女性がいました。

主訴は「しんどい」、脈拍は、50台でした。
怪しいと思い、説得して24時間心電図(ホルター心電図)を取りました。
解析結果を見て驚きました。
平均心拍数20回。

睡眠中には、たった8回という時間帯もありました。
すぐに病院に入院させました。

ペースメーカーを入れる最中に何度も心臓が止まったそうです。
幸い、処置は成功しその後の経過も良好でした。
「徐脈性不整脈」という重大な不整脈です。

脈を打つ信号を出す、心臓の中枢指令室から指令信号が出ていない場合と、
指令はしっかり出ても、現場(=心臓の筋肉)に全く伝わらない場合があります。
脈が遅くなると、脳に血が巡らず、眼の前が真っ暗になります。

転倒して頭を強打したら、命に関わります。
ですから、即座に「心臓ペースメーカー」を入れなければなりません。

研修医時代には、指導医のもと自分で入れたこともありました。
今にして思えば、かなり高度なことをやらせてもらいました。
手慣れた専門医がやれば、短時間で終わる手術です。

昔、高速走行中に車が急にエンストして、死にかけたことがありました。
調べてもらうと、エンジン内のプラグが故障していました。
たった数ミリの部品の故障が、死を招いたかもしれない体験でした。

心臓ペースースメーカーの話も、どこか似ています。
いくらすべての臓器が正常でも、脈拍信号を発するわずかな中枢指令部の不調が、
死をもたらす可能性があるのです。

高齢化に伴い、ペースメーカーを入れる人が増えています。
当院でも、毎年、誰かがこれを入れています。
ペースメーカーこそ、現代医学の恩恵と感じます。