《1270》 2歳の孫が手伝う在宅医療 [未分類]

低酸素脳症の方が6年間入院していた病院から
自宅に戻って来られました。
そういう状態を、遷延性意識障害ともいいます。

6年前、心筋梗塞でいったん心肺停止状態になりました。
蘇生処置で息を吹き返したものの、意識レベルが
低下したまま病院で療養してこられた方です。

目を開いたり、手を動かしたりはできますが、
会話や意思疎通はまったくできません。
食べられないので胃ろうで栄養補給をしています。

自宅には、子供さん夫婦とお孫さんがいます。
このような人が自宅に帰ることにどれだけの
意味があるのかなと退院時は、疑問でした。

在宅医療は、本人が喜ぶことで成立します。
あるいは家族の強い希望があって、そうなります。
しかしこの場合は、家族のかすかな希望だけでした。

それでも6年間も入院していた病院を、
いったんは退院してみようということになりました。
私もとりあえず帰ってから考えようと返事をしました。

帰られてすぐに、ケア会議が開催されました。
胃ろうの管理、痰の吸引などについて看護師さん、
介護士さんとも入念に打ち合わせをしました。

痰が多く、夜間も頻回の吸引が必要とのことでした。
しかし帰宅してからは痰の吸引が必要なくなりました。
何故だかよく分かりません。

予想外だったことは、2歳のお孫さんが熱心に
お世話(お相手?)をしてくれることでした。
そのお陰が一番大きいのかなと思いました。

1週間もすると、表情が柔らかくなりました。
自宅にいることが、どこか分かるのでしょうか。
よく分かりませんが、いい方向に行っています。

最初は、家族も不安がいっぱいでした。
しかし何となく良くなってくるので
少し安堵しているようでした。

このように、地図の無い旅のような
在宅医療も時にあります。
意外にも2歳のお孫さんが鍵を握っていました。