《1280》 「便所」の文字に介護者の苦労を見た [未分類]

昨日は新規の在宅患者さんが3件もありました。
定期訪問、通常外来に加えて新規の訪問が3つ。
末期がん、認知症、老衰でした。

週末になると駆け込みの在宅依頼が増えます。
週末になると不安なのでしょうか。
病院からの退院は日曜日が多いのですが。

認知症の患者さんを地図を見ながら初めて訪問すると、
子供さん夫妻を含む一家総出で出迎えてくれました。
それだけみんな困っているのです。

いくら病院に入院させても暴れてすぐ退院になり困る、
家でもまったく言うことをきかないとのことでした。
よくある話です。

家に入ると、「便所」と書かれた紙の看板が
3枚ぶら下がっていました。
どうもトイレに行くのに迷子になるようです。

ははーん、まだ歩けるんだな、と分かりました。
「便所!」と書いたマジックの筆跡に
介護者の御苦労がにじみ出ているような気がしました。

「何才ですか?」と聞いてみると、
「63才」とのこと。
 ほんとは90才を超えているのですが。

私を見て「35才」と言いました。
定年退職をした息子さんを指して「まだ20才代」とも。
いいなあ、こんなひと。

屈託が無い。
35才と言われて、なんだか元気になりました。
要は、時間が20~30年止まっているのです。

いいじゃないですか、素敵ですね、
なんて言ったら、家族全員に睨まれました。
「こんなにボケて何がいいんですか!?」

「いやこのままでいいんです。
 自分たちの価値観に合わせようとしないでね」
と。

医療職も何人かいる家族は、私を信じていないようでした。
まあ、たった20分で信じてくれと言う方がおかしいか。

じゃあ、明日か明後日の市民フォーラムに来られませんか?
できれば本人さんもお連れして、とだけ言ってきました。

今週末は、当院が主催する秋の市民フィーラムです。
西宮(19日)尼崎(20日)でやります。

認知症について知りたい方、遊びに来てください。
昨日のご家族もどうも来てくれるようです。