《1294》 「便所」と書いた紙が必要なくなってしまった… [未分類]

午前5時に、往診に呼ばれました。
そのまま在宅看取りとなりました。
老衰での大往生。

午前5時は、外はまだ真っ暗。
空には新月が美しく見えます。
始発電車が動き出す直前です。

配達などの仕事の人に混じって、
歩いている人を多く見かけました。
ほとんどが中高年の男性・・・

私が診ているメタボの患者さんも
何人か一生懸命に歩いていました。
車窓から見ると必死の形相でした。

みんな一生懸命努力しているんだ。
私は車で流しているけれど・・・
不思議な光景を沢山見てしまいました。

気温は11度。
しかしまだ夏の薄いシャツを着ています。
外を歩いている人は軽い冬支度のひとも。

患者さんの家でしばしご家族と談笑。
涙はありません。
看とりといってもずっとこんな感じ。

ただ残念なのは、「便所」と書いた紙が
もう必要が無くなったこと。
剥がされる前に撮らせて頂きました。

その方は、最期までご自分で便所に行っていた。
最期まで食べることが人間の尊厳と言いますが。
実は最期まで便所に行くことも人間の尊厳です。

尊厳の中にある尊厳死。
ご家族とそんな話をして外に出ると、
知らぬ間に、夜が白んでいました。

午前6時を過ぎると、もう朝です。
談笑している間に夜から朝になっていました。
荘厳な最期に相応しい爽やかな朝の光です。

午後は尼崎で学校の先生たちに平穏死の講演。
先生たちにも、死について勉強して頂きます。
夕から、島根県松江市での研究会に参加。

明日は、島根県益田市で講演します。
尼崎でも11度ですから、島根は寒いだろうな、
何を着て行こうかな、なんて思案をしています。