《1326》 風邪もいろいろ、患者もいろいろ [未分類]

風邪の患者さんで、医療機関はどこも混んでいます。
寒くなると単純にそれだけで医療機関は忙しくなります。
これから3週間は、1年で一番忙しい季節に突入します。

風邪と言って受診される方でも油断はできません。
結核かもしれません。
肺炎かも、肺がんかもしれません。

しかし、まさか全員にレントゲン検査をすることはありません。
風邪ではなく気管支炎から肺炎が疑われる方には検査をします。
特に、2週間以上の咳の方は要注意です。

抗生物質を要求される患者さんが結構おられ、難儀します。
「先生、マイシン、ちゃんと出しとってな」
「ただの風邪なんやから、マイシンなんか要らんやんか」

なかなか納得されず、根負けしてしまうことがあります。
本屋に行けば、「風邪で抗生剤を出す医医者はヤブ医者」
と書かれた本が、飛ぶように売れているので複雑です。

「あなたはただの風邪、寝ておきなさい」と
言ったところで、それで納得される患者さんは少数です。
たいてい「風邪薬を沢山出してくれ」、と言われます。

そこで、PL顆粒(総合感冒薬)を出そうとします。
しかし、本屋さんの店頭に並ぶ本には「風邪でPLを
 出す医者はバカ」と書かれているので、これまた複雑です。

ならばと、大好きな小青竜湯麻黄附子細辛湯
しましょうか、と提案してみます。
この提案も却下されることもしばしばです。

 ○ 粉薬は飲めない
 ○ 漢方薬は効きが弱いのでイヤ
 ○ とにかく一発で治る薬に変えて欲しい

とのことで受け入れられないことも多い。
たかが風邪ですが、結構、悩む時があります。
本当はここに来ないで、家で寝ていた方が得だと思うのですが……

ただ、風邪を訴えて受診される人には、裏にいろんなメッセージが
隠されていることが多いので、そちらの方を嗅ぎ取ろうとします。
もちろん、肺がんの発見のきっかけになることがあります。

あるいは、胃がんが発見されたこともあります。
風邪薬を飲んで胃が痛くなり、次の週に胃カメラを飲んだのです。
あるいは、認知症のお母さんの在宅医療を依頼されることもある。

町医者は風邪に始まり、風邪に終わる。

研修医にはそう指導している自分自身が、この言葉を
一瞬忘れそうになる時があります。
あまりに外来が混雑している時などです。

そんな自分自身と葛藤しながら、なんとか1日を終えていきます。
それが年の瀬、
風邪の季節です。

ただ月、火曜日は、外来終了後の訪問診療、往診が多くて、
午後11時近くまでは在宅医療で働いています。
寝ている患者さんを起こして診察することもしばしばです。