《1345》 前立腺がんと男性ホルモンの素朴な疑問 [未分類]

ずっと疑問に思ってきたことがあります。
男性ホルモン(テストステロン)が多い人は、
前立腺がんになり易いのか?という素朴な疑問。

あるいは男性ホルモンが少ない人に、
男性ホルモンの補充療法を行ったら
前立腺がんにならないのか?という疑問、です。

答えは、どちらもNO!です。

以前は専門家もそうした疑問を抱いていたそうですが、
現在では否定されています。

最近の研究で、前立腺がんの発がんに
男性ホルモンは関係がない事が
はっきり分かっています。

ただし一旦前立腺がんができると、
がんに男性ホルモンの受容体ができて、
男性ホルモンはがんを大きくすることも分かっています。

この辺がちょっと分かりにくい点ですが、
女性の更年期障害に対して
乳がんと子宮がん検診をやりながらホルモン補充療法を
行うことと同じことだと理解しています。

さて、ひとくちに“前立腺がん”と言ってもいろいろです。
タチがいいがんと悪いがんがあることが知られています。
人間の世界と一緒で、人生いろいろ、がんもいろいろ。

タチがいいとは、放置しておいても一生、命に関わらないがん。
悪いがんとは、あちこちに転移して若くても亡くなってしまうがん。
もちろんその間にもいろんなタイプがあり単純な話ではありません。

また、がんになった当初は「タチがいいがん」であっても
歳をとるうちに途中から「悪いがん」に変わることもあります。
これも人間と同じ。

最近の研究では、男性ホルモンは「タチのいい前立腺がん」が
「悪いがん」にならないようにしていることが分かってきました。
もし、男性ホルモンが低いと「悪いがん」になり易いとも言えます。

さて、前立腺がんの腫瘍マーカーとして血液中のPSAが有名です。
PSAとは、日本語では前立腺特異抗原のこと。
1979年にワングらによって発見されました。

前立腺で作られるタンパク質で精液の産生に関係して、
精子を受精しやすくする働きがありますが、
現在では前立腺がんの腫瘍マーカーとして広く使われています。

前立腺がんの患者さんの血液中のPSA値は高く、
治療に応じて低下します。
従ってがんの早期発見のみならず治療効果の指標として便利な検査。

しかしPSA値が高いからがんである、とは限りません。
前立腺肥大症、前立腺炎、乗馬などで前立腺を圧迫されただけでも
PSAは簡単に上昇します。

あと、血液中のPSA値の基準値は、年齢によって違います。
歳をとるほど基準値が上がるのは、どこか血圧と似ています。

60歳未満なら、2.5ng/ml 以下、60~64歳なら3以下、
65歳以上は4以下が正常とされます。

(続く)