《1349》 すべて個室の施設は外鍵だった [未分類]

先日、ある老人施設に往診を依頼されました。
昼間はロビーで診るのですが、その日は夜だったので
お部屋におられるとのことで上がっていきました。

すべて個室なのですが、外から鍵がかけられていました。
鍵を外して中に入ってビックリ。
入所者はオシッコまみれで床に倒れていました。

最初は死んでいるのかと思いましたが生きていました。
介護士さんとベッドの上に持ち上げました。
部屋を出る時、介護士さんは外から施錠しました。

別の部屋も訪問することになりました。
その部屋も外鍵を外してから中に入りました。
その部屋の人も下半身だけズリ落ちて寝ていました。

その人も持ち上げて、部屋を出ましたが、
また外鍵をかけていました。
介護士は鍵の束をジャラジャラいわせていました。

「どうして鍵をかけるのですか?」と聞いてみました。
すると「夜徘徊したり、暴れるから」ということでした。
他の入所者さんに迷惑をかけてはいけないとのことです。

別の老人施設も個室の外から鍵をかけていました。
しかし入所者もそれに対抗するかのように内側から
鍵をかけてしまい外から入れないようになっていました。

介護士さんは困った表情で私にこう言いました。
「先生、内側から鍵をかけなくするような薬を出して下さい」。
もちろんそんな薬はありません。

別の部屋に入ってみました。
するとその高齢者は私にこう懇願されました。

「さっきまで手足を縛られていたが先生が来るので解かれた。
縛られるのは辛いので、病院に入院させて欲しい」と。
私は返す言葉がありませんでした。

身体拘束は現在でも普通に行われています。
あるいは牢屋のように閉じ込められています。
いや牢屋の方が格子の間から見えるのでマシかも。

倒れていても室外から見つけることもできません。
壁の上にある電気のスイッチもナースコールのような
SOSのスイッチも本人は押すことができません。

「移動」という人間の尊厳は無視されていました。
介護職員にそう指摘しても、ポカーンとした顔です。
鍵をかけたり縛ることに抵抗は全くないようでした。

(続く)