《1351》 点滴さえ止めてくれれば…… [未分類]

末期がんの知人は、管だらけになりゼコゼコいっていました。
しかし、このゼコゼコを止めるのは実に簡単です。
点滴をやめればいいだけです。

たったこれだけでゼコゼコは収まり、心不全は改善し
呼吸は楽になり、食事もできるようになります。
たったひとつのことをやるだけでいいのですが・・・

詰所には、10人ぐらいの看護師さんが
パソコン画面に向かっていました。
医師もみんなパソコンです。

ベッドサイドには心電図モニター、酸素、点滴ポンプなど。
そこには、人間も会話も食事も音楽も読書も無い。
人生の終末期の大切な時間が、繋がれて流れて行く。

その人は、人としてとってもいいことばかりしてきた人です。
何も悪いことをしていないのに、人生の最期に縛られて
それをやめてくれ、と声をあげることもできない。

なんていうことでしょう。

平穏死を説くために本を書き、講演をしまくった1年でした。
しかし現場の病院には何の影響もありませんでした。
看護師に聞いても平穏死なんて聞いたこともないと・・・

ショックでした。
病院では誰も知らない「平穏死」。
終末期に点滴を沢山すれば縮命で、苦痛が増大するだけなのに。

今年は約90名の平穏死を在宅で看ました。
看取ったというより、死の周辺を看守ったのです。
どなたも管一本ない文字通り穏やかな死でした。

しかし、久々に病院で見た終末期は、まさに悲惨な姿。
医師や看護師は全く気にしていません。
当たり前のように淡々と点滴が取り変えられていました。

タイムマシン、タイムトリップという言葉を思い出しました。
30年前の研修医の時に、毎日濃厚に行っていた延命治療は
現在はさらに進化した形で立派に継続していました。