《1362》 やしきたかじんさんと食道がん [未分類]

歌手でタレントのやしきたかじんさんが
亡くなられたと聞き、ショックを受けました。
64歳は、まだ若いと言われる年代です。

復帰を楽しみにしていたのに、残念です。
新聞報道によると食道がんが判明していてから
全経過は2年だったそうです。

胃がんについて書いてきましたが、
食道粘膜は胃粘膜とは構造が異なります

第一に、食道粘膜の表面は扁平上皮と言います。
扁平上皮とは、皮膚と同じようなものです。
一方、胃粘膜の表面は腺窩上皮と言い、異なります。

第二に、食道には家の外壁に相当する
「漿膜」がありません。
胃腸にはソーセージの皮みたいな漿膜があります。

漿膜が無いと、がんが壁の外に飛び出し易い。
食道がんは早期に周囲のリンパ節に飛び易い。
外に飛び出せば当然がんの治療も難しくなります。

食道がんは、タチの悪いがんの代表です。
早期がんの定義も胃がんとは異なります。
助かるのは早期の中の早期のがんだけと言ってもいい。

逆にいえば、早期の早期で見つけないと完治しにくい。
そんながんは通常の内視鏡検査では見えにくいことも。
よーく目を凝らして観てやっと気がつくようなことも。

もちろん、そんな場合はヨード等の色素を散布します。
それで初めて、早期のがんが浮かび上がることもある。
とにかく治せる範囲の食道がんを見つけることは、難しい。

これまで何十例かの食道がんを見つけてきましたが、
内視鏡治療や手術で治せた食道がんは数例だけです。
それだけ食道がんは早期に発見することが困難ながん。

もちろんものが詰まるなどの自覚症状が出て見つかる
食道がんは、残念ながら根治できる可能性は低いです。
助かる食道がんは無症状のうちに発見できたものです。

素人の内視鏡医は、胃はもちろん見ますが食道は
あまり熱心に見ない傾向があります。
胃の方が食道より圧倒的に病気が多いからです。

しかしプロの内視鏡医は時と場合によっては
食道も熱心に見ます。
プロとは、消化器内視鏡専門医のこと。

時と場合とは、男性、喫煙、アルコールです。
特に喫煙が重要です。
もちろんそれは咽頭がんや喉頭がんにおいても同様です。

3拍子が揃った人の食道には、無条件にヨードを散布して
早期食道がんの発見に尽力されている内視鏡専門医もいる。
早期がんは、それくらい気合いを入れないと見つけにくい。

食道がんで命を落とさないためには、まずは禁煙です。
そしてさんざん、吸ってきた方は、内視鏡専門医に
胃だけでなく食道もよく見てもらうことが大切です。

早期発見・早期治療という言葉は、胃がんだけでなく、
食道がんには、もっと当てはまるような気がします。
繰り返しになりますが、まずは、禁煙が最重要です。

以上、たかじんさんのご冥福をお祈り申し上げながら、
今日は、食道がんについて書かせていただきました。