タバコとは、そもそも一体何物でしょうか?
よく「タバコは日本の文化だ」と言う人がいます。
しかし、決して古来からあったものではありません。
源氏物語の時代にタバコはありませんでした。
1400年の終わりにアメリカ大陸を発見したコロンブスが、
タバコと梅毒を世界中に広めました。
日本には、鉄砲と一緒に種子島に伝来したものです。
昔から〝酒とタバコ〟はよく一緒にされますが間違い。
お酒は、嗜好品であり、薬になります。
しかし、タバコは嗜好品ではなく、少量でも毒物です。
こんなことさえも、まだ充分に知られていないのが実情です。
毒物であるかどうかアメリカの裁判で争われたのが最近です。
かく言う私自身も、恥ずかしながら大学生のある期間、
何も知らずに1日40本ものタバコを吸っていました。
「あまり体によくはないだろうけど、大人の必要悪かな?」と。
医学生でありながら、タバコについて何も知りませんでした。
当時、タバコに関する医学講義は皆無でした。
現在でも、タバコに関する医学教育は大変遅れています。
タバコの煙には4000種類以上の化学物質および250種類以上の毒物や
発がん性物質が含まれています。
例えばタバコの煙にはアセトン、アンモニアおよびトルエンのようにペンキ除去剤、
クリーナー、溶剤に含まれる刺激性物質、カーバッテリーに用いられるカドミウム、
毒物であるヒ素、排気ガスに含まれる一酸化炭素などが含まれています。
一番厄介なのは、ニコチンが依存性を引き起こすことです。
漫画家の高信太郎氏は、これを「ニコチンの呪い」と表現しました。
「ニコチンの呪い」と思える場面を、町医者として日々経験します。
ニコチンは脳にあるニコチンレセプターに結合して、神経末端から
ドーパミンという快楽物質を出します。
この「快楽」というご褒美が「報酬系」という回路を作ります。
すなわち毒性と依存性こそが、タバコの正体なのです。
さらにこの毒性が、本人のみならず周囲にまで及ぶのでタバコ問題は難儀なのです。
「タバコは嗜好品」と主張される患者さんには、とても時間がかかります。