《1376》 早期胃がんを放置したら(その3) [未分類]

結局、この論文からどのような教訓が得られるでしょうか?
私なりに考えてみたいと思います。

第1点目として、多くの早期胃がんが、もし治療しなければ
やがて進行がんとなり死に至ることは間違いなさそうです。

第2に、一方、早期胃がんがある高齢患者はかなりの割合で
そのがんが臨床的に問題となる前に他の疾患で亡くなるであろうこと。

第3に、早期胃がんの中には進行しないか、進行したとしても
非常にゆっくりで浸潤しにくいタイプがあると考えられること。

従って内視鏡的に診断された早期胃がんの全てに必ずしも
外科手術が正しい選択とは限らない、とも言えるでしょう。

この20~25年間でEMRという内視鏡的手術が進歩、普及して
純粋な早期胃がんは、その恩恵に預かれる患者さんが増えています。

現在では、EMRの対象とならない早期胃がんには、腹腔鏡を用いた
外科手術例も増えていて、”治療”の在り方は大きく変化しています。

今後、早期胃がんがどのようにして粘膜の病変から粘膜下の病変へ、
そして漿膜にまで浸潤したり、周囲のリンパ節や遠くの臓器に転移したりと
進行する要因を解明するという大きな課題が浮かび上がります。

早期胃がんという概念は、存在しますし、必要なものです。
早期がんを経て、進行がんに至ることは、疑いようがありません。

早期胃がんは、進行胃がんより命を奪われる確率は格段に少ない。
従ってもし可能であれば、胃がんは早期に発見したほうが、有利。

しかし、これは健常者の場合の話。

高齢者や虚弱者の場合は、もし早期胃がんが発見されても
他の病気で亡くなる可能性があるので
治療したほうがいいとは断言できない。

以上、当たり前の結論かとも思いますが、一流医学誌に掲載された
ちゃんとした医学論文を読み返して、私なりに感想を述べました。

《PS》
ノロウイルスとインフルエンザウイルスが流行しています。
マスクと手洗いを励行し、充分な休養と睡眠を取られて、
感染予防に注意してください。